全 情 報

ID番号 00089
事件名 地位保全仮処分申請事件
いわゆる事件名 セキノ興産事件
争点
事案概要  傭車契約により製品運搬の業務に従事する貨物自動車持込の運転手が、解雇を通告されたので、不当労働行為を主張して、従業員たる地位保全、賃金仮払の仮処分を申請した事例。(申請一部認容)
参照法条 労働基準法9条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 傭車運転手
裁判年月日 1974年2月22日
裁判所名 富山地
裁判形式 判決
事件番号 昭和48年 (ヨ) 36 
裁判結果 一部認容 一部却下(控訴)
出典 時報737号99頁
審級関係
評釈論文 青山嵩・労働法律旬報856号72頁
判決理由  右認定の事実によって認められる申請人らの勤務の実体に則して考えると、被申請人会社は申請人らを勤務時間中完全に拘束してその支配下におさめ、申請人らもまた同会社に対し従属関係に立っていたものと考えるのが相当であり、そうであれば、両者の間には雇用契約関係が成立していたものというべきであって、被申請人主張のごとき単なる運送契約とはいえない。もっとも、《証拠略》によれば、申請人らについては出勤簿、賃金台帳がなく、賃金については基本給、諸手当の区別はなく、また慶弔金および退職年金規程の適用もなく、各種保険等の掛金の徴収、税金の納付もなかったこと、更に作業服が支給されなかったし、社員名簿に申請人らの名前が記載されておらず、申請人らに対する報酬は会社の経理上、発送運賃または運搬費として処理していた等他の従業員と異なる取扱がなされていたことが疏明されるけれども、申請人らの勤務関係が雇用契約であるか否かを判断する重要な基準を使用者との間の支配従属関係の有無に求める以上、右事実をもってしても、雇用契約関係の成立を否定すべき資料とはなりえない。
 しかして、前記認定の事実によれば、申請人らは、「貨物自動車持ち込み」で被申請人会社に勤務する契約内容になっているので申請人らの地位はいわば「貨物自動車持ち込み運転手たる従業員」というべきところ、その「貨物自動車持ち込み」の点は、被申請人会社が運転手である申請人らを雇用すると同時に同人らの所有する貨物自動車を賃借したものと解するのが相当である。したがって、申請人らと被申請人会社との間の契約は、雇用契約に自動車賃貸借契約を含んだ一種の混合契約の性質を有するものとみるべきであり、その雇用契約の範囲において労働法上の保護を受けうるものというべきである。