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ID番号 00097
事件名 労働契約関係不存在確認請求事件
いわゆる事件名 阪神観光事件
争点
事案概要  キャバレーを経営する会社が、キャバレーに出演しているバンドの楽団員との間の雇用契約関係の不存在の確認を求めた事例。(請求一部認容)
参照法条 労働基準法9条,10条,11条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 演奏楽団員
裁判年月日 1978年7月27日
裁判所名 神戸地尼崎支
裁判形式 判決
事件番号 昭和48年 (ワ) 83 
昭和48年 (ワ) 187 
裁判結果 一部認容(控訴)
出典 労働判例309号45頁/労経速報1130号15頁
審級関係 控訴審/03267/大阪高/昭55. 8.26/昭和53年(ネ)1483号
評釈論文 香川孝三・ジュリスト710号160頁
判決理由  前示事実に基いて考えると、被告Y1ら四名は、いずれも現在原告会社と「A」への優先出演の契約を締結しているものということができるが、原告会社の指定する日時、場所で出演すべき義務を負うていることはいうまでもなく、原告会社の定めた演奏業務の遂行にあたっては、原告会社の一般的な指揮監督のもとにあって、その服務規律の適用を受けているものであり、また、その出演報酬は演奏という労働自体の対価的性質を有するものであって、しかも、両被告らはこれを主たる収入源としてその生計を立てているのであるから、原告会社と同被告らとの間には、いわゆる使用従属関係があるものと解すべきであり、労働契約が存するものと認めるのが相当である(被告Y2、同Y3については、その後労働契約関係が消滅したことは前示のとおりである。)。
 もっとも、楽団員が休んだ場合の臨時雇の採用や楽団員の退団に伴う後任者の補充はバンドマスターたる被告Y1、同Y4によってなされているけれども、これは前記認定のように、音楽的な知識や縁故関係を持たない原告会社が自らこれを実施することはむつかしいために、原告会社において右被告両名にこれらの権限を委任していることによるものと解せられる。また、原告会社は演奏料をバンドマスターたる右被告両名に各楽団毎に一括して支払っており、右被告両名が自らをも含めたその楽団の所属員にこれを分配しているけれども、給与所得の源泉徴収は原告会社が当初より各楽団員毎に行なっていること等に徴すれば、右被告両名は原告会社に対する関係では自らをも含めた楽団員の代表者にすぎないというべきである。従って、右のような各事実があるからといって、これらは、楽団出演という特殊雇用契約に随伴するものとみるべきであり、原告会社と被告Y1ら四名との間の労働契約関係を否定する理由とはなしがたい。