全 情 報

ID番号 00098
事件名 地位保全仮処分申請事件
いわゆる事件名 日本共産党事件
争点
事案概要  共産党県委員会の指導・活動の在り方を批判したとして、党県委員会の県勤務員を解任された党員が、県勤務員としての仮の地位の保全を求めた事例。(申請却下)
参照法条 労働基準法8条,9条,11条
民法643条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 委任・請負と労働契約
裁判年月日 1978年11月20日
裁判所名 名古屋地
裁判形式 決定
事件番号 昭和52年 (ヨ) 1657 
昭和52年 (ヨ) 1658 
昭和52年 (ヨ) 1908 
裁判結果 却下
出典 労働民例集29巻5・6合併号742頁/時報927号242頁/タイムズ378号74頁
審級関係
評釈論文
判決理由  (二)以上に認定した事実によれば、県勤務員は、自発的献身的に党活動に専従する政党の常任活動家であり、県常任委員の指揮命令を受けるというよりは、県常任委員を補佐し、これに協力して執行機関である県常任委員会を構成し、全県党の指導活動並びに一般党務に従事する者であり、勤務場所、勤務時間の拘束はなく、欠勤控除もないかわりに、時間外割増賃金、有給休暇の定めもないというのであるから、以上のような県勤務員の勤務の実態に即して考えると、県勤務員に対する給与は、党務に専従するための活動費であり、生活補償費の意味合も含まれてはいるが、労務の提供と対価関係にあるとは認められず、従属労働性の度合は稀薄であり、県勤務員と被申請人県委員会との法律関係は、労基法の適用を受ける雇用契約関係にあると目することは困難であって、寧ろ、県常任委員と同様に委任契約ないしこれに類似する法律関係と認めるのが相当である。
 (中 略)
 県勤務員は、給与名下に金員が支給され、有償である点において市民的権利につらなる側面のあることは否定できないところであるから、その限りにおいて政党の自律権は制約を受けるものというべく、本件解任処分の当否は、司法審査の対象となると解するのが相当である。これに反する被申請人らの主張は採用できない。
 六 そこで、本件解任処分の効力について判断するに、本件解任処分は、法的には委任契約の解除権の行使にほかならないところ、本件のような有償委任契約の解除については、委任者が任意にこれを行使することはできず、相当の事由を要すると解せられる。
 ところで、本件解任処分につき労基法の適用がないことは先に述べたとおりであるところ、申請人は、労基法一九条違反のみを無効原因として主張しているのであるから、右主張はもとより採用できず、他に無効原因の存することについては、何らの主張がないのみならず、申請人は、審尋期日に、解任するに足りる事由の存することについては争わない旨陳述しているから、本件解任処分は有効と認めるの外はなく、県勤務員たる地位の保全等を求める仮処分申請は、その余の点につき判断するまでもなく被保全権利の疎明を欠くことになる。