全 情 報

ID番号 00136
事件名 地位保全金員支払仮処分申請控訴事件
いわゆる事件名 布施自動車教習所事件
争点
事案概要  子会社の事業所閉鎖、解散に伴い解雇された子会社従業員らが、右解雇は労働協約所定の事前協議条項に違反し、また不当労働行為等にあたり無効であり、しかも従業員らとの雇用関係は親会社との間で存続しているとして地位保全等求めた仮処分申請事件の控訴審。(変更、解雇後解散までの未払賃金の仮払のみ認容)
参照法条 労働基準法9条,10条,2章
民法1条3項
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 使用者 / 法人格否認の法理と親子会社
解雇(民事) / 解雇手続 / 同意・協議条項
裁判年月日 1984年3月30日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 昭和57年 (ネ) 1557 
昭和57年 (ネ) 1563 
裁判結果 一部変更
出典 時報1122号164頁/労経速報1195号3頁/労働判例438号53頁
審級関係 一審/00124/大阪地/昭57. 7.30/昭和53年(ヨ)4719号
評釈論文 西村健一郎・昭和59年度重要判例解説〔ジュリスト838号〕228頁/西谷敏・法学雑誌〔大阪市立大〕32巻1号154頁/道幸哲也・判例評論312号45頁/和田肇・ジュリスト836号119頁
判決理由  〔労基法の基本原則―使用者―法人格否認の法理と親子会社〕
 しかしながら、同教習所のなした本件解雇及び解雇後の賃金については、被控訴人らはそれらを否認して、同X1会社に対し雇用契約上の地位及び右賃金の支払を求めることはできない。けだし、法人格否認は、端的にいえば、形式上の法人格の行為とその実体をなす個人もしくは別法人の行為とを同一視することにある。しかるところ、前記一の4の(二)に説示したとおり、控訴人X2教習所が昭和五三年五月六日なした会社解散決議は、同教習所の労働組合壊滅を目的とした不当労働行為に基づくものではあるが、右解散は真実解散する意思のもとになされたものであるから右解散決議は有効であり、右解散を理由とした本件解雇も有効なものである。そうすると、被控訴人らは、同教習所の右解散決議及び本件解雇を否認し同X1会社の行為と同一視しても、右解散決議及び本件解雇が有効であることに変わりがなく、被控訴人らは同X1会社に対し、雇用契約上の地位や本件解雇後の賃金支払を求めることはできない。
 もっとも、同教習所の前記解散決議が真実解散の場合であっても、同教習所が形骸法人、すなわち同X1会社の一営業部門とみられるような場合には偽装解散と同様に考えるのが相当であるが、同教習所は形骸法人に当らないことは前記二の2に説示したとおりである。もし、濫用法人格否認論によって同X1会社に雇用契約の地位や本件解雇後の賃金を支払わせるとした場合、法人としての実体がある同教習所に右賃金の支払義務がないとされているのに、法人格上第三者とされ、かつ同教習所の労使関係に対し直接支配力を行使したことのない同X1会社に同教習所の行為以上の責任を課することになるばかりか、被控訴人らが他に就職することのない限り、右賃金をいつまでも支払わせる結果にもなって著しく不合理である。
 以上要するに、本件は濫用法人格否認の場合に当るが、同教習所の解散決議及び本件解雇が有効であり、同会社に本件解雇後の賃金支払義務がない以上、被控訴人らはそれらの行為を否認して同X1会社に対し、雇用契約上の地位や右賃金の支払を求めることはできないものというべきである。
 〔解雇―解雇手続―同意・協議条項〕
 右労働協約七条には「会社は合併、分割、譲渡、解散、事業所の縮小及び休止、長期休業その他従業員に重大な影響を及ぼす事項については事前に組合と協議決定する。」と定められていたことは当事者間に争いがない。
 被控訴人は解雇も右事前協議事項の対象となっていると主張する。
 なるほど、解雇は従業員に重大な影響を及ぼす事項ではあるけれども、(イ)右労働協約七条には解雇が明記されていないこと、(ロ)右労働協約七条が従業員に重大な影響を及ぼす事項として挙示しているものは、前記のとおり会社の合併、解散、事業所の縮小などであって、これらはいずれも会社の経営に関する事項であること、(ハ)右労働協約の一二条以下には別に労働者の人事に関する事項についての規定を置いていること、を考えると、右労働協約七条が事前協議事項の対象としたのは会社の合併、解散、事業所閉鎖などの経営事項であって、解雇という従業員の待遇に関する事項は含まれていないものと解するのが相当である。よって、被控訴人らの前記主張は採用できない。