全 情 報

ID番号 00142
事件名 地位保全等仮処分申請事件
いわゆる事件名 山崎パン事件
争点
事案概要  経営不振により倒産した会社の従業員が、倒産前この会社の経営を事実上支配していた被告会社との雇用関係の存在を主張して地位保全の仮処分を申請した事例。(棄却)
参照法条 労働基準法2章
体系項目 労働契約(民事) / 成立
裁判年月日 1966年6月14日
裁判所名 東京地
裁判形式 決定
事件番号 昭和41年 (ヨ) 2242 
裁判結果
出典 時報454号59頁
審級関係
評釈論文
判決理由  (1)もと申請人らが雇われていた申請外A株式会社は既に昭和三六年一二月以降経営不振であったところ、昭和三七年五月被申請会社においてA株式会社債権者らからの依頼にもとづき被申請会社専務取締役BをA株式会社に派遣してその代表取締役に就任させ、被申請会社より出向した従業員七名の補佐のもとに同年八月六日頃までA株式会社の経営にあたらせたこと、
 (2)A株式会社は、被申請会社の許諾を得て、同年一〇月一日その商号をC株式会社板橋工場と変更し、その後被申請会社の要求によりその商号を再びA株式会社と改めるまでこれを使用していたこと、
 (3)その後被申請会社はA株式会社の経営から手をひくことになり、その結果同年一一月以降前記Bは被申請会社役員たることを辞任し、個人としてA株式会社の経営にあたったこと、
 (4)この間被申請会社は、前記のとおりA株式会社に自社役員又は従業員を派遣又は出向させ、自社の商号を使用させたほか、あるいは「C」という自社商標の使用を許し、あるいはA株式会社債権者らの保証の下に同会社に融資するなど、A株式会社経営の実権を握り、あるいはこれを援助した事実のあること、
 (5)しかし、A株式会社は、その経営不振を遂に挽回することができず、債権者らの意向にもとづき、操業を停止の上清算の方法により債務の弁済をするほかなきに至り、申請人ら従業員全員に解雇を申渡したことから争議となったが、昭和三九年一二月二九日申請人らの所属する日本労働組合総評議会全国一般労働組合東京地方本部A株式会社工業労働組合とA株式会社との間に、被申請会社取締役E及び日本労働組合総評議会全国一般労働組合東京地方本部組織部長Fが立会人名義で記名押印した「申請人ら七名を含む同組合員三四名に対する昭和三九年四月九日附解雇を取消し、同日附依願退職とする。会社は組合に対し退職金並に解決金として金五三四万円を昭和三九年一二月二九日支払う。会社は右組合員を他社へ極力就労できるよう斡旋する」旨の協定書を交換し、その項A株式会社は右協定にもとづき金五三四万円を前記組合に支払い、申請人らはこれと引換に昭和三九年四月九日付退職願をA株式会社に提出、受理されて争議が解決したこと、
 (6)その後、前記協定書にいう組合員三四名のうち、帰郷、入院その他の事情から就労を望まない五名と申請人ら七名とを除いた二二名は全員被申請会社において就労していること、がそれぞれ疎明されるけれども、これだけでは被申請会社がA株式会社経営の実権を握った時期ないしそれ以後において、被申請会社と申請人らとの間に法律上雇傭契約関係を生じたことの疎明があるとは到底いい難い。