全 情 報

ID番号 00213
事件名 地位保全等仮処分申請事件
いわゆる事件名 山一証券事件
争点
事案概要  結婚後も継続勤務を希望しながらも結婚退職の慣行を理由に任意退職を迫られやむを得ず退職に合意した証券会社の女子職員が、右合意は、錯誤、心裡留保等によるものであり無効である等として地位保全等求めた仮処分申請事件。(申請認容)
参照法条 労働基準法2章
日本国憲法13条,14条,24条
民法90条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 均等待遇 / 結婚・出産退職制
裁判年月日 1970年8月26日
裁判所名 名古屋地
裁判形式 判決
事件番号 昭和42年 (ヨ) 1821 
裁判結果 認容
出典 労働民例集21巻4号1205頁/時報613号91頁
審級関係
評釈論文 後藤清・労働判例111号85頁/手塚和彰・ジュリスト487号143頁
判決理由  ところで、女子労働者が結婚したときは継続勤務の意思の有無にかかわりなく一律に退職することを要する旨の前記慣行は労働条件につき性別による合理性のない差別待遇をしたことになり、又女子労働者の結婚の自由を合理的な理由なく制約するものである。
 従ってこのような慣行は憲法第一四条、第一三条、第二四条の精神に違反するから、結局民法第九〇条に違反し無効であることは縷説を要しない。
 (中 略)
 してみれば、申請人が本件退職願を提出するについて動機となった結婚退職の慣行の有効性につき、申請人において錯誤があったことになる。
 そして先に認定したとおり、会社は右慣行の存在を理由に申請人に対しこれに従うべきことを要求し、申請人はこの要求に応じて退職願を提出したのであるから、右動機は表示されたものというべきであり、申請人が右慣行は無効であるからこれに従う義務はなく、結婚後も継続して勤務する権利のあることを知っておれば本件退職願を提出しなかったことは余りに明白であるから、結局申請人の退職願の提出による本件合意解除の意思表示には民法第九五条の法律行為の要素の錯誤があったことになり、無効といわざるを得ない。