全 情 報

ID番号 00218
事件名 地位保全賃金支払仮処分控訴事件
いわゆる事件名 日産自動車事件
争点
事案概要  男子五五歳・女子五〇歳の男女差別定年制につき、定年に関し男女を差別することに合理的理由があり、公序良俗に反しないとされた事例。
参照法条 労働基準法3条
民法90条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 均等待遇 / 男女別定年制
裁判年月日 1973年3月12日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和46年 (ネ) 1114 
裁判結果 棄却
出典 労働民例集24巻1・2合併号84頁/時報698号31頁/東高民時報24巻3号44頁/タイムズ291号175頁
審級関係 一審/00215/東京地/昭46. 4. 8/昭和44年(ヨ)2210号
評釈論文 凪崎二郎・ジュリスト578号212頁/水野勝・労働法律旬報834号43頁/西谷敏・判例評論176号36頁/島田信義・労働法律旬報832号35頁
判決理由  定年年令についても右のように女子のそれを男子のそれより低くする取扱は、それが専ら女子であることのみを理由とする以外に他に合理的理由が認められないときは憲法第一四条の趣旨に反し公序良俗に反するものと解するのが相当であるところ、本件協約の目的、その締結経過は右のとおりであるから、被控訴会社の男女別定年制をそのまゝ本件合併時以後におけるA会社の事業場においても採用することに合理的根拠があるものと認められない限り、本件協約中女子の定年年令に関する部分は専ら女子であることのみを理由とするものとして無効とすべきである。
 人間の生理的機能の年令的変化という点においては男女間に特別の差はないが、一般的にみて生理的機能水準自体は女子は男子に劣り、女子の五〇才のそれに匹敵する男子の年令は五二才位、女子五五才のそれに匹敵する男子の年令は七〇才位とみられていること、A会社も被控訴会社も自動車製造を業とする企業であり、女子従業員は特に生産部門においては男子と同等の作業を要求し得ない分野があり、看護婦・電話交換手・タイピストなどの専門職種は別として庶務・人事・経理・設計等の部門でいわゆる一般職務に従事しているものが大部分であること、被控訴会社は年功序列型の賃金体系を採用しておる(A会社も同様である)こと、(中 略)。
 以上の事実がそれぞれ認められるのであって、右事実からすれば、本件合併後におけるA会社の事業場の従業員についても、被控訴会社の従前の従業員についてと同様に、女子従業員は一般的にいって職場が男子のそれよりも狭く限定され、その職場での業務は入社後数年すれば習熟し、それ以上の勤続年数を重ねてもその企業への貢献度は男子従業員に比して向上せず、賃金と労働能率のアンバランスは男子従業員より早期に生ずるとみることができる。してみれば、A会社の従業員の待遇に関する基準を本件合併時における被控訴会社の従業員の待遇に関する基準に統一させることとし、その結果定年年令について男女の差別取扱をすることとする本件協約が専ら女子であることのみを理由とするものではないというべきであるから、控訴人の主張は採用できない。