全 情 報

ID番号 00232
事件名 地位保全仮処分命令申請事件
いわゆる事件名 上智学院事件
争点
事案概要  六五歳定年制を定めた就業規則の適用を受けて退職した従業員が、右就業規則は意見聴取、届出、周知の各義務に違反し無効であり、また右定年制自体合理性がないとして地位保全等求めた仮処分申請事件。(申請却下)
参照法条 労働基準法89条,106条1項
体系項目 就業規則(民事) / 意見聴取
就業規則(民事) / 就業規則の届出
就業規則(民事) / 就業規則の周知
退職 / 定年・再雇用
裁判年月日 1968年6月29日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和40年 (ヨ) 2163 
裁判結果
出典 タイムズ229号219頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔就業規則―意見聴取、就業規則の届出、就業規則の周知〕
 本件就務規則を作成した当時これを所定の掲示板に掲示して教職員一同の意見を徴したというのであって、このような場合は労働基準法第九〇条に規定された労働者(本件では教職員)の過半数を代表する者の意見聴取という要請を十分満たしているものというべく(けだし、労働者の意見をその代表者を通じて聴かないで、直接に聴くという方法によったに過ぎないからである)、また、同法第八九条の行政官庁に対する届出の要求は単なる取締規定に過ぎないから、この届出を欠いても就業規則の効力には影響がないと解するのが相当である。
 (中 略)
 (4)また、前記認定によれば、被申請人は、昭和二九年本件就務規則を作成した当時これを所定の掲示板に掲示し、また、その謄写物を教職員に配布したというのであり、そして、昭和三五年定年制採用の改正就務規則については、当時行われた団体交渉において組合にこれを提示し、組合はこれを謄写して組合員に配布しているというのであって、このような場合には、労働基準法第一〇六条第一項所定の周知方法を尽くしていない点があっても、これがため本件就務規則の効力を否定すべきものとはなし得ない。
〔退職―定年・再雇用〕
 被申請人は、年功序列的な賃金体系の下で多数の老令教職員の雇傭をその侭続けることが財政上許されない状態にあったこと、新進気鋭の後進に道を譲つて貰うこと等の理由から本件定年制を採用したというのであるから、本件定年制の採用については一応合理的理由の存在を首肯できないことはなく、被申請人が申請人の主張するような不当不法な意図から本件定年制を採用したと認めうべき資料はない。
 以上、要するに、本件定年制が無効であるとの申請人の主張はすべて理由のないものである。