全 情 報

ID番号 00270
事件名 地位保全仮処分控訴事件
いわゆる事件名 日野自動車事件
争点
事案概要  労働契約上職種を定めて雇い入れられた労働者が、他職種への配転拒否を理由に解雇されたのに対し、右解雇は無効であるとして地位保全等求めた仮処分申請事件の控訴審。(控訴棄却、労働者勝訴)
参照法条 労働基準法2章
民法1条3項,627条
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令の根拠
解雇(民事) / 解雇の自由
裁判年月日 1968年4月24日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和42年 (ネ) 1332 
裁判結果 棄却
出典 労働民例集19巻2号571頁/時報525号82頁/タイムズ221号144頁
審級関係 控訴審/04339/東京高/昭42. 6.16/昭和39年(ヨ)2206号
評釈論文 瀬元美知男・判例評論120号42頁/本田尊正・月刊労働問題128号106頁
判決理由  〔配転・出向・転籍・派遣―配転命令の根拠〕
 一般に労働者をその職種を定めて雇い入れたときは、労働契約上労働者の提供すべき労務の種類内容がこれにより特定されることになり、爾後の職種の変更は、当事者双方の明示もしくは黙示の合意によるべく、使用者がその一方的命令により労働者に対し他の職種への異動を命じ、異種の労務を要求することはできないものである。
 〔解雇―解雇の自由〕
 期間の定めのない労働契約は、市民法原理に基づけば、各当事者がいつでも自由に(ただし労働基準法第一九条、第二〇条等の規制に従って)これを解約できることとなるが、しかしこの原則を貫徹するときは当然に労働者の生存権、労働権と鋭く対立する結果となる。とくにわが国の労働関係は一般に終身雇傭を半ば当然の前提としている関係上、解雇は直接に労働者の生活をおびやかし、労働関係の安定を害すること顕著であり、これに対処するに労働者側の団結の力のみをもってするのでは必ずしも十分とはいいがたい。
 労働関係が継続的法律関係として社会的に高度の安定性を要求されることにかんがみると、当事者の自由対等を前提とした市民法上の雇傭契約における解雇の自由は、労働法原理によって規律される労働契約関係(従属労働関係)においては、解釈上おのずから原理的修正をうけ、解雇には合理的にみて首肯するに足る相当な理由の存在を必要とし、これのない解雇は許されないものと解してよいと思われる(もっともこのことは、解雇自由の原則自体は一応否定しないで、ただ理由のない解雇は解雇権の濫用として抑制する理論をとっても、実質的に大差はなく、立証責任の点は別として、結果的には殆んど同じ結論を導くことになろう)。ともあれ本件では、控訴人の示した理由が不当であり、ほかに然るべき理由もないので、かかる恣意的な解雇は無効と解するほかはない。