全 情 報

ID番号 00274
事件名 仮処分控訴事件
いわゆる事件名 三興製紙事件
争点
事案概要  配転命令を拒否し長期無断欠勤したことを理由に懲戒解雇された組合役員が、右配転命令は不当労働行為に当り無効である等として地位保全等求めた仮処分申請事件の控訴審。(控訴認容、労働者敗訴)
参照法条 労働基準法2章
労働組合法16条
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令の根拠
裁判年月日 1970年10月20日
裁判所名 名古屋高
裁判形式 判決
事件番号 昭和42年 (ネ) 719 
裁判結果
出典 労働民例集21巻5号1351頁
審級関係 一審/名古屋地/昭42. 7.10/昭和41年(ヨ)225号
評釈論文
判決理由  控訴会社は前記労働協約第一七条に「本人の意向を考慮して」とあるのは、発令前にあらかじめ本人の意向を聞きこれを確めるという趣旨ではなく、人事管理の任に当る者が従業員の平素の勤務などを通じて知り得た範囲での本人の意向を念頭に置き会社の業務の都合によって公平に人事異動を行うという趣旨であるとの解釈のもとに従来から人事の異動を発令するに当りあらかじめ発令前に本人の意向を聞くという取扱いをせず、前述の趣旨で慎重に検討して人事の発令をなし、発令に対して異議ある場合はその理由を聞き、考慮すべき正当の事由あるときは再考するが、これに該当しないときは発令どおりの人事を行うという方針に基づき人事異動を行って来た(控訴会社のこの取扱いについては従来組合から格別の異議の申出でもなかった)ものであって、本件配転についても従来の取扱いと同様右の方針に基づきこれを行ったもので、被控訴人の場合だけ本人の意向を全く無視して例外的な取扱いをしたものではないことが疏明される。そして前記労働協約第一七条に「本人の意向を考慮して」とある条項についての控訴会社の前述解釈は妥当なものとしてこれを是認できる。従って控訴会社が本件配転命令の発令をするにつきあらかじめ被控訴人の意向を聞かずに行ったことを以て労働協約第一七条にいう本人の意向を無視した違法のものということはできず、この点に関する被控訴人の主張は採用できない。