全 情 報

ID番号 00275
事件名 転任処分取消請求事件
いわゆる事件名 北海道教組事件
争点
事案概要  転任を命ぜられた公立学校の教職員が、右転任命令は思想、信条を理由とする差別的取扱にあたり憲法一四条、地方公務員法一三、五四条に違反し無効である等として転任処分の取消しを求めた事例。(請求認容)
参照法条 日本国憲法14条、19条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 均等待遇 / 信条と均等待遇(レッドパージなど)
裁判年月日 1971年11月19日
裁判所名 札幌地
裁判形式 判決
事件番号 昭和43年 (行ウ) 44 
裁判結果
出典 行裁例集22巻11・12合併号1842頁/時報651号22頁/タイムズ271号160頁
審級関係
評釈論文 影山日出弥・季刊教育法3号120頁/影山日出弥・教育判例百選34頁/角田邦重・月刊労働問題169号90頁/慶谷淑夫・労働判例143号33頁
判決理由  そもそも教職員の人事異動は、教育行政の一環として教育基本法の精神にもとづき、教育目的を遂行達成するために必要な諸条件の整備確立を目標とし(同法一〇条二項参照)、教職員の身分を尊重しつつ(同法六条二項参照)行なわれるべきであって、そのためには当該教職員の経歴、前任校及び転任校の人的あるいは地理的、物的各状況以外に同人の個人的事情(家族、年齢、健康状態等)をも含めて、その前任校における具体的な教育活動につき正当かつ充分な配慮がなされるべきである。したがってこのような考慮を欠いたまま僻地、非僻地間の交流を図る等の目標を名目に、当該教員の思想、信条を理由として人事異動を行なった場合、その転任処分は思想、信条による差別の面からは憲法一四条、一九条に、処分の目的の面からは教育基本法の精神にいずれも反するものとして違法といわざるをえない。
 (中 略)
 本件転任処分が被告設置の基準ないし目標にのっとり実質的に公平かつ不合理な差別なしに行なわれたことは到底認めることができず、かえって前記基準、目標が本件の場合処分の真の理由を覆う隠れみの的な役割を果したとすら指摘できる。
 すなわち、A小学校のB校長は校長の方針に非協力的な教職員は問題教員であり、共産党員ないしその同調者であれば問題教員であると信じ(中 略)。
 専ら教職員の思想、信条に関する情報を収集したうえ原告の思想、信条を嫌悪し、これを理由として身上調書の校長所見欄には美辞をつらねながら一方で原告を共産党員でありかつA小学校組織並にC教員組織をつくりあげた元凶等と誹謗する前記文書、メモ等により市教育長、地方教育局長に原告の転任を強く願い出、また市教育長、被告の地方教育局長は人事異動を行なう際に本来なら当該教員の個人的事情、具体的教育活動につき正当な配慮をするべきところ、これらに対する配慮なしに、同校長が一見して極めて不合理な根拠にもとづき原告の転任を願い出ていることが明らかであるにもかかわらず、一般的に校長の判断に頼るというよりはむしろB校長の不当な観点とその判断に同調した結果、たまたま原告がA小学校に長期に亘り在任していたという事情を名分に被告が本件転任処分を行なうに至ったことが認められる。
 そうであるとすれば、その余の論点につき判断を加えるまでもなく本件転任処分は原告の思想、信条を理由とした偏見、恣意にもとづく違法、無効なものとして取消しを免れない。