全 情 報

ID番号 00292
事件名 地位保全等仮処分申請控訴事件
いわゆる事件名 東亜石油事件
争点
事案概要  配転命令の拒否、争議時の保安協定違反を理由として、就業規則に基づき、懲戒解雇された組合員らが、従業員としての地位保全等の仮処分を申請した事例。(一審 申請認容、当審 原判決取消、申請却下)
参照法条 労働基準法2章,89条1項9号
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令の根拠
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務命令拒否・違反
裁判年月日 1976年7月19日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和44年 (ネ) 1592 
裁判結果 取消 却下(確定)
出典 労働民例集27巻3・4合併号397頁
審級関係 一審/04254/東京地/昭44. 6.28/昭和40年(ヨ)2193号
評釈論文
判決理由  成立に争いのない(書証略)によれば、会社の就業規則には、その第六六条第一項に「業務の都合により従業員に対し任免を行い転勤、職場、職務の変更を命ずることがある」との規定があること、Aは、入社に際し、「会社の諸規定を守り、会社業務の都合により出張又は各地事業場に転勤する場合異議を述べない」旨の誓約書を、身元保証人二名とともに連署の上、会社に差し入れたことが認められる。
 したがって、Aは、右規定により転勤及び職務の変更(これらを以下「配転」という)を命ぜられたときは右命令が労使間の信義則に反する等特段の事情がない限り、これに従うべき労働契約上の義務がある。
 (中 略)
 会社の就業規則によれば、転勤を命ぜられた従業員は、受命の日より一週間以内に出発し、速かに赴任すべきものとされ(第六六条第二項)、懲戒解雇事由の一として会社の指令命令に従わず故意に職場の秩序をみだした者が挙げられている(第一一〇条第四号)ことが、(書証略)により認められる。
 ところで、前記(一)(二)の認定事実に弁論の全趣旨を総合すれば、Aは、本件配転命令により、本社潤滑油部陸上課において勤務する労働契約上の義務があるのに、右命令に従わず故意に職場の秩序を乱したものと認められるから、同人には前記就業規則上の懲戒事由が存するものと言い得る。
 (中 略)
 右認定事実によれば、会社は、Aに対し、本件配転命令に従うよう説得を尽くし、また、組合とも配転問題につき一〇回以上話合の機会を持ち、発令後七カ月余も経過したのであるが、Aが同命令に従わなかったため懲戒解雇に及んだものであり、右交渉の経過に本件配転の必要性及びAがこれを拒否した事情に関する前認定事実を総合するならば、右懲戒解雇が権利の濫用であると言い得ないことは明白である。