全 情 報

ID番号 00321
事件名 配置転換無効確認請求事件
いわゆる事件名 愛生会厚生荘病院事件
争点
事案概要  病院の事務員から洗濯係(労務員)へ配転された者および入院事務担当から購買部売店へ配転された者が、その効力を争った事例。
参照法条 労働基準法2章
民法1条3項
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の濫用
裁判年月日 1982年7月7日
裁判所名 東京地八王子支
裁判形式 判決
事件番号 昭和53年 (ワ) 1472 
裁判結果 一部認容
出典 労働判例391号65頁
審級関係
評釈論文
判決理由  以上考察してきた点、とりわけ前記1認定の諸事実に本件配転命令に関する被告主張の業務上の必要性、合理性がいずれもその根拠として薄弱で首肯できない点を総合すると、本件配転命令は、かねてより被告の労災責任を追求し、被告として快く思っていなかった原告らが、本件ビラを配布して被告従業員の一部に対し不信と反感を招き業務上の秩序を乱したところから、専ら原告らを従業員と接触する機会の少ない職場に遠ざけ、いわば隔離することによって右従業員の沈静化を図り、もって、業務上の秩序回復をしようとしたもので、その実質的な狙いは本件ビラ配布に対する責任追及、すなわち秩序違反に対する制裁にあったものと解するのが相当である。
 右のとおりとすれば、原告X1に対する本件配転命令は業務上の必要性、合理性もないのに労務指揮権に基づく配転に名を藉り、実質的には懲戒処分の一環としてなされたもので、しかも、同原告は本件ビラ配布に関しては既に懲戒処分として訓戒に処せられていること、被告の就業規則においては懲戒は訓戒・減俸・解雇の三処分に限定され配置換えはないことが《証拠略》によって明らかであるから、これらの点を、本件で考察してきたその他諸般の点に併せ考えれば、同原告に対する本件配転命令は被告の労務指揮権を不当に濫用した無効のものというべきである。(なお、原告X2に対する本件配転命令が労働契約上の職種の変更に当らないとしても、その効力は原告X1に対する本件配転命令と同じように労務指揮権の濫用として無効とすべきことはいうまでもない。)。