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ID番号 00345
事件名 雇用関係確認等請求本訴、建物明渡請求反訴事件
いわゆる事件名 古河電気工業事件
争点
事案概要  在籍出向中であった上告人に対し被上告人会社が復帰命令を発したにもかかわらず上告人が出向先の職場への出勤を続けたため被上告人が上告人を懲戒解雇に付したところ、上告人が右解雇の無効を主張して雇用契約上の権利確認と賃金支払を求めた事例。(上告棄却)
参照法条 民法625条1項
労働基準法2章
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 復帰命令
裁判年月日 1985年4月5日
裁判所名 最高二小
裁判形式 判決
事件番号 昭和56年 (オ) 856 
裁判結果 棄却
出典 民集39巻3号675頁/時報1158号240頁/タイムズ560号121頁/裁判所時報911号4頁/労働判例450号48頁/労経速報1217号10頁/金融商事723号39頁/裁判集民144号417頁
審級関係 控訴審/01879/東京高/昭56. 5.27/昭和53年(ネ)187号
評釈論文 ・季刊公企労研究66号107~112頁1986年3月/・手形研究30巻3号24~25頁1986年3月/下井隆史・判例評論327〔判例時報1183〕50~54頁1986年5月/樫原義比古・法律時報58巻9号98~101頁1986年8月/岩井國立・最高裁労働判例〔7〕―問題点とその解説296~311頁1987年11月/慶谷淑夫・法律のひろば38巻7号47~52頁1985年7月/佐藤敬二・労働判例百選<第7版>〔別冊ジュリスト165〕80~81頁/秋田成就・ジュリスト882号125~127頁1987年4月15日
判決理由  労働者が使用者(出向元)との間の雇用契約に基づく従業員たる身分を保有しながら第三者(出向先)の指揮監督の下に労務を提供するという形態の出向(いわゆる在籍出向)が命じられた場合において、その後出向元が、出向先の同意を得た上、右出向関係を解消して労働者に対し復帰を命ずるについては、特段の事由のない限り、当該労働者の同意を得る必要はないものと解すべきである。けだし、右の場合における復帰命令は、指揮監督の主体を出向先から出向元へ変更するものではあるが、労働者が出向元の指揮監督の下に労務を提供するということは、もともと出向元との当初の雇用契約において合意されていた事柄であって、在籍出向においては、出向元へ復帰させないことを予定して出向が命じられ、労働者がこれに同意した結果、将来労働者が再び出向元の指揮監督の下に労務を提供することはない旨の合意が成立したものとみられるなどの特段の事由がない限り、労働者が出向元の指揮監督の下に労務を提供するという当初の雇用契約における合意自体には何らの変容を及ぼさず、右合意の存在を前提とした上で、一時的に出向先の指揮監督の下に労務を提供する関係となっていたにすぎないものというべきであるからである。