全 情 報

ID番号 00366
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 東京芝浦電気事件
争点
事案概要  期間を二ケ月とする雇用契約につき、更新拒絶の意思表示がないときはさらに従前と同一の期間をもって同一内容の契約が更新される旨の暗黙の合意が成立しているものが、期間を二ケ月とする雇用契約の更新拒絶の意思表示が、不当労働行為に当たらず、また権利の濫用にも該当しないとされた事例。
参照法条 民法1条3項,627条,629条
労働基準法21条
体系項目 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 1963年4月24日
裁判所名 横浜地
裁判形式 決定
事件番号 昭和36年 (ヨ) 17 
裁判結果
出典 労働民例集14巻2号631頁
審級関係
評釈論文 向山寛夫・ジュリスト318号112頁
判決理由  申請人等は入社に際し被申請人会社担当者から期間が満了しても解雇するものではない、安心して長く働いて欲しい、一年経てばいわゆる本工登用試験を受けることもできる旨の説明を受けた事実のあること、被申請人会社においては申請人等の雇入以前から正規従業員と採用基準、労働条件、入社後の教育方法等を異にする臨時従業員を多数雇用しこれら臨時従業員を正規従業員とほぼ同一の職種、作業に従事させるとともに短期間の契約を逐次更新する方法によりかなりの長期間にわたり雇用を継続している事例が少なくなく、現に申請人等の場合もほぼ二カ月毎に前記のとおり更新をくり返し各自の通算雇用期間は一〇カ月ないし二年に及んでいること、被申請人は申請人等の契約期間が満了しても直ちに新規の労働契約締結の手続をとらずに申請人等が引き続き前と同一の労務に従事した後日時を経てからその手続をとることが多かったこと、被申請人会社臨時従業員就業規則(疎乙第三号証の一)第八条は「次の各号の一に該当するときは、これを解雇する。」「三、契約期間が満了したとき」と規定し期間満了による雇止めの場合にもその旨の意思表示を要するものとしていることがそれぞれ一応認めることができ、これらの事実によれば、被申請人と申請人等との間には、契約期間満了とともに申請人等を雇止めにするためには更新拒絶の意思表示を要しもしその意思表示がないときはさらに前と同一の期間をもって同一の内容の契約を更新する旨の暗黙の合意が当初から成立していたものというべきである。そして、かような場合において被申請人が更新拒絶の意思表示を為すにつきその意思表示が主として労働組合の正当な行為をしたこと等の故をもってなされた場合には当該意思表示を解雇に準ずるものとして不当労働行為が成立し、また、それが濫用にわたる場合には権利の濫用に該当するものと解するのが相当である。
 (中 略)
 以上のとおり、被申請人が申請人等に対してなした本件各更新拒絶の意思表示が無効であるとの申請人等の主張は何れも理由がないから、本件仮処分申請は何れも之を却下することとし、民事訴訟法第八十九条、第九十三条第一項本文を適用して主文のとおり決定する。