全 情 報

ID番号 00371
事件名 地位保全仮処分申請事件
いわゆる事件名 凸版印刷事件
争点
事案概要  民青に加盟しその運動を行っていた臨時工が、期間を六ケ月とする契約が反覆更新されてきたところ、更新を拒絶されたので、右更新拒絶は実質的に解雇と異らず無効であるとして地位保全と賃金支払の仮処分を求めた事例。(認容)
参照法条 労働基準法21条
民法629条
体系項目 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 1967年6月9日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和38年 (ヨ) 2128 
裁判結果
出典 タイムズ209号226頁
審級関係
評釈論文
判決理由  申請人は季節的臨時的作業に属しない単純作業に従事する臨時工であったこと、被申請会社ではこの種臨時工の雇傭契約期間を通常六ケ月とし、期間満了毎に更新することとしているが(この点は当事者に争いがない。)昭和三四年六月以降は、右更新の都度必ず疎乙第二号証のような「会社が雇傭期間満了後もなお引続き雇傭の必要を認めるときには、右満了前あらかじめ継続の意思表示をしてこれを更新できると共に、業務の都合によっては期間満了前といえども、解除できる。」旨の条項が不動文字で記載してある一定様式の用紙を用いて契約書を作成していたこと、しかし、各記載に拘らず実際上は、雇傭期間満了前後被申請会社から継続の意思表示がなくても、臨時工らは更新を予期してあえて被申請会社にその意思の有無を確かめるようなことはせず、期間満了後も引続き勤務を続ける一方被申請会社もまた何らこれを異としないで黙認し、その後に至って前記のような契約書の調印作成を行うことがむしろ常態であったことがそれぞれ疎明される。被申請人の提出援用にかかる疎明中以上に反する部分はいずれも採用しない。
 これらの諸事実から推せば、被申請会社のこの種臨時工は、その名称の如何に拘らず、実質上一種の常傭工であって、たとえ契約書に前記のような不動文字による記載があっても、雇傭期間満了前に当事者のいずれかから更新拒絶等特段の意思表示をしないかぎり、右期間満了と共に当然前記期間その他の労働条件のもとに自動的に雇傭契約が更新することにつき暗黙の了解があるものと認むべく、本件臨時工契約もこの例に洩れないものと解するのが相当である。
 (中 略)
 よって、更に進んで、前示更新拒絶の意思表示の効力につき考えるに(中 略)。
 右意思表示は、前示のように契約の自動更新により一種の常傭工化している臨時工の雇傭関係を終了させる効力を有するものであるから、実質的には解雇と何ら異らず、従って、若しそれが当該臨時工の政治的信条のみを理由とするとき或は不当労働行為にあたるときは、解雇の場合と同様、労働基準法三条、労働組合法七条の各規定から窺い得る公の秩序に反する点において無効であって、雇傭関係を終了させる効果を生じない。