全 情 報

ID番号 00375
事件名 雇用契約上の権利確認等請求事件
いわゆる事件名 サッポロビール事件
争点
事案概要  二ケ月ないし六ケ月の雇用契約期間で一年ないし二年間右契約を反復更新されてきた臨時工らが、更新拒絶の意思表示を受けたのに対し、右拒絶は自動更新する旨の黙示の合意に反し無効である等として雇用契約上の権利の確認等を求めた事例。(請求棄却)
参照法条 民法629条
労働基準法21条
体系項目 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 1969年8月19日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和41年 (ワ) 9065 
裁判結果 棄却
出典 時報589号80頁/タイムズ241号154頁
審級関係
評釈論文
判決理由  原告らは、長期雇用を予定されて入社したものであるから、労働契約締結の当初から期間の定めがなかった旨、また、契約の当初はともかくとして、その後契約は反覆更新されているから、本件更新拒絶の意思表示当時は期間の定めのない契約に転換していた旨主張するが、前記認定事実から右主張事実を推認することは困難であり、他にこれを肯認できる資料はなく、単に期間の定めのある労働契約が反覆更新されたという外形的事実から、契約が期間の定めのないものに転換されたと解すべき理由に乏しい。
 もっとも、被告会社において、臨時工制度に藉口して、なんら合理的理由がないのに形式上短期間を定めた労働契約を締結し、これを反覆することにより労働法規の適用を免れようとする意図がある場合は、原告ら主張の公序良俗に反し無効となる余地はあるが、被告会社における臨時工の有期労働契約の脱法性を認めるに足る証拠はなく、景気変動に備えて雇用量を調整することは、企業の採算上やむを得ぬ面があることは否定できず、そのため設けられた臨時工制度に種々の問題があるとしても、このことから、直ちにその存在理由を欠くと断ずるには足らない。
 期間の定めのある労働契約においても、雇用期間が反覆更新され、被用者において期間満了後も使用者が雇用を継続すべきものと期待することに合理性が認められる場合には、使用者が更新を拒絶することは実質上解雇と同視すべきであるから、使用者の更新拒絶が信義則上許されないものと評価されるとき、また、これが不当労働行為と目されるときは、無効であると解するが相当である。
 これを本件についてみると、原告X1は同四〇年二月一日、同X2は同年二月五日、同X3は同三八年一二月二日、それぞれ期間を六ケ月とする臨時工として被告会社に採用され、その後二ケ月ないし六ケ月と期間を定めて契約の更新を重ね、その間若干の中断期間はあるが、再採用を予定したうえでの中断にすぎず、その作業内容も臨時的なものでなかったことはすでに判示したとおりであり、原告らが期間満了後も雇用関係を継続すべきことを期待していたことは弁論の全趣旨から明らかであるので、同人らが右期間満了後も更に雇用されるものと期待することに合理性がある場合に該当するということができる。
 (中 略)
 そこで、本件更新拒絶が信義則上許される場合に該当するかどうかについて考える。
 (中 略)
 将来も本工登用の見込のない被用者を引き続き雇用することは、使用者にとり人事管理上も種々問題があることは否定できず、本件の場合、原告らに対し当初の二月二六日付雇い止め通告から期間の満了までにほぼ二ケ月以上の余裕を設けているから、以上の諸事情を考え合わせると、本件更新拒絶の意思表示が信義則上許されない場合に該当すると断定するには足りない。