全 情 報

ID番号 00449
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 日伸運輸事件
争点
事案概要  営業譲渡と労働契約関係の承継につき、譲受人たる被申請者を相手どって地位保全の仮処分申請がなされた事例。(認容)
参照法条 労働基準法2章
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約の承継 / 営業譲渡
裁判年月日 1963年11月21日
裁判所名 神戸地姫路支
裁判形式 判決
事件番号 昭和38年 (ヨ) 39 
裁判結果
出典 労働民例集14巻6号1434頁
審級関係
評釈論文 藤井昭治・法律時報37巻13号102頁
判決理由  二、そこで本件営業譲渡と申請人の労働契約関係について検討する。およそ企業の経営組織の変更を伴わないところの企業主体の交替を意味するごとき営業譲渡の場合においては、従前の労働契約関係はこれを新企業主体に承継せしめない合理的な措置(例えば営業の一部譲渡の場合には残存企業への配置転換が可能である)がとられる等特段の事情がない限り当然一体として新企業主体に承継されなければならず、個別的に労働者の引継ぎを除外することはできないものと解するのが相当である。これを本件についてみるに本件営業譲渡は前記認定のとおり、被申請人が申請外A株式会社からその運輸部門に関する設備、資材、得意先など営業組織一切を譲受し、被申請人の取締役六名のうち約三名は右申請外会社の取締役をも兼ね、申請人の株式全部は右申請外会社が有する等、形式的に企業主体が交替したとは言え実質的には企業の経営組織の変更がなく、且つその従業員について被申請人に承継させない等特段の措置がとられたものでないから、その従業員は右営業譲渡により当然一体として被申請人に承継されたものと認めるべきである。そして申請人は本件営業譲渡の当時右申請外会社の運輸部における従業員としての地位を有していたことは前記認定のとおりであるから、申請人の右従業員としての地位も他の従業員と同様右営業譲渡により当然被申請人に承継されたものというべくその引継ぎを除外することはできないものといわなければならない。この点に関して被申請人は営業譲渡契約の範囲や内容は契約当事者が自由に合意し得るところであり、本件営業譲渡契約の内容には申請人を承継雇傭する約条は含まれていない旨主張するけれども到底採用することはできない。
 しかして昭和三七年三月二八日に右申請外会社がした前記解雇通知は既に従業員でないものに対する意思表示であつて何らの効力もないことは言う迄もない。