全 情 報

ID番号 00636
事件名 地位保全等仮処分申請事件
いわゆる事件名 名村造船所事件
争点
事案概要  使用者がなした整理解雇につき、組合活動を嫌悪したものであるとして、従業員としての地位の確認を求めた仮処分事件。
参照法条 民法1条3項,625条1項
労働基準法2章
体系項目 解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇の要件
解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇基準・被解雇者選定の合理性
裁判年月日 1981年5月8日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 昭和54年 (ヨ) 1965 
裁判結果 一部認容(控訴)
出典 時報1018号122頁/タイムズ443号110頁/労働判例364号26頁/労経速報1089号5頁
審級関係 控訴審/00651/大阪高/昭60. 7.31/昭和56年(ネ)1084号
評釈論文 西川雅偉・労働判例380号4頁
判決理由 〔解雇―整理解雇―整理解雇の要件〕
 整理解雇が労働者側にとって企業から放逐されるにつき何ら責むべき事情がないにもかかわらず、使用者側の経営の苦況克服という一方的事情により、生活の糧を得る唯一の手段とも言うべき従業員としての地位を失なわせるものであることに鑑みれば、整理解雇が有効とされるためには、次の要件を必要とすると解すべきである。すなわち、先ず第一に企業が客観的にみて厳しい経営危機に陥り、解雇回避のため相当の手段を講じたにもかかわらずなおかつ解雇による人員削減が必要やむをえなかったと認められること、第二に被解雇者の選定基準が合理的であって、その具体的な運用も客観的かつ公平に行われたこと、第三に解雇に至る過程において従業員またはその組織する労働組合と十分協議を尽くしたことの各要件を充足することを要し、右要件を欠く場合には、その整理解雇は信義則に違背し、ないしは解雇権濫用として無効のものと解すべきである。
〔解雇―整理解雇―整理解雇基準〕
 出向は本来使用者に対して給付すべき労働力を第三者の指揮命令下におくことを内容とし、しかも出向により労働者は職種、職務内容、就労場所の変更を余儀なくされるなど実質的不利益を受けることが通常であるから、原則として労働者の同意が必要であると解される。しかしながら企業が客観的に厳しい経営危機に陥り、その克服のため人員削減がやむをえないと認められるような状況において整理解雇回避のため、やむなく労働者に対し出向を要請する場合であって、出向者の選定も合理性があり、労働者側とも十分協議を経ていて、しかも出向を拒否しなければならない特段の事情が存しないときには、出向につき同意を与えないことが同意権の濫用と評価される余地があると考えられる。けだし、企業が経営危機克服策を講ずる際において、これに協力しないことは一種の信頼関係を被壊するものであり、また解雇防止のため企業に出向の努力を要求しながら、労働者においてこれに一切協力しないことを認めるのは公平を欠くといわなければならないからである。そして同意権の濫用にわたる場合には、出向拒否者を整理解雇の対象とする基準を設け指名解雇することは社会通念上相当であり許容されなければならない。そのことは出向要請が単なる打診の形をとっていたとしても変わるところはないと解せられる。