全 情 報

ID番号 00766
事件名 解雇無効確認請求事件
いわゆる事件名 秀栄社事件
争点
事案概要  出勤状況不良、技能拙劣、作業伝票不提出等を理由に解雇された従業員が、会社には就業規則がなく、右解雇は解雇基準によらない恣意的理由づけによるもので無効であるとして解雇無効確認を求めた事例。(請求棄却)
参照法条 民法1条3項、623条
体系項目 就業規則(民事) / 就業規則の届出
就業規則(民事) / 就業規則の周知
裁判年月日 1971年11月1日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和45年 (ワ) 6978 
裁判結果
出典 労働判例138号48頁
審級関係
評釈論文
判決理由  被告が労働基準法上、就業規則を作成して行政官庁に届け出、これを労働者に周知させる義務があり、右義務違反は罰則の適用を受ける違法行為だとしても、被告が前示不作為の故に当然にその従業員を解雇できなくなるいわれはない。また、当時被告会社にはいかなる形においてにせよ従業員の解雇基準がなかったことは、弁論の全趣旨に徴し明らかであるが、使用は予め定められた解雇基準によらなければ労働者を解雇できないという理由もない。
 (中 略)
 そこで被告が原告を解雇するに至った事情として主張するところを検討してみる。
 (中 略)
 原告が被告会社の業務上の指示に従わず作業伝票を毎日提出しなかったことは、事が些少であるとは言え、被告会社従業員としての適性を欠くと評されても止むを得ないものといわなければならない。
 (中 略)
 原告は製図にしてもトレースにしても他の従業員と比較すると前例を見ない程著しく多くの時間を要したことがそれぞれ認められる。右認定の事実に前示証拠を合わせ考えると、被告会社が原告の技能が拙劣で、能率がわるいとみたのは無理もないことと認められる。
 (中 略)
 被告会社代表者が原告を呼んでこのような拙い仕事では得意先に納品できないからと言って注意を与えたところ、
 原告はこの図面が納品できないのはおかしいと言って激しく反発したことが認められる。
 (中 略)
 以上の事実によれば被告会社が原告の態度を協調的でなく反抗的であるとみたのは無理からぬところである。
 (中 略)
 以上考察したところによれば、被告会社が原告を解雇するについては唯単に原告が気に入らないとして勝手気ままにこれをしたものとは認め難く、本件解雇については首肯するに足りる合理的な理由があったものといわなければならない。従って本件解雇を目して被告が解雇権を濫用したものとか、公序良俗に反するとかいうことはできない。