全 情 報

ID番号 00856
事件名 地位保全等仮処分申請事件
いわゆる事件名 ホクシン交通事件
争点
事案概要  営業収入が低く従業員中最低であり再三の注意にもかかわらず改善の見込がないので従業員として不適当であるとの理由で申請人が解雇されたため地位保全等の仮処分を申請した事例(一部認容)。
参照法条 民法627条
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 勤務成績不良・勤務態度
裁判年月日 1985年7月19日
裁判所名 札幌地
裁判形式 決定
事件番号 昭和60年 (ヨ) 58 
裁判結果 一部認容
出典 労働判例462号25頁
審級関係
評釈論文 佐藤義雄・労働法律旬報1129号42頁1985年10月10日
判決理由  3 そこで右低営収を理由とする本件解雇の合理性について考えるに、もとよりタクシー事業も利潤の追求を目的とする私企業であるから、勤務成績が低劣な労働者の雇用を継続する義務が債務者に存すると解することはできず、その意味において、低営収の労働者を企業から排除することを目的とした前記就業規則の規定は一応合理性があるものということができる。しかしながら、その際、いかなる基準で低営収と判定するか、低営収者と判定されたもののうち誰を解雇するかについては、債務者において合理的な裁量の範囲を超えるものであってはならないのは、いうまでもないところである。
 そこで検討すると、(証拠略)によれば、債務者会社における乗務員の就業時間は原則として午前八時から翌日午前二時まで(昼食時及び夕食時各一時間の休憩)とされているが、多くの乗務員は事実上右の所定労働時間を超えて勤務し、増収をはかっていることが一応認められる。かかる実情の下において、一乗務当りの運収額の比較のみによって乗務員の勤務成績の優劣を判定するならば、時間外労働に服さない労働者の運収額が相対的に低く評価されることは必然であり、そうすると当該労働者が時間外労働をしないという事実をもって不利に斟酌する結果となり、そのことがひいては当該労働者の解雇に結びつけて評価されるとするならば、当該労働者に時間外労働を事実上強制する結果を招くものといわざるを得ない。してみると、かかる運収額のみによる比較は労働基準法の精神を損い、合理的な比較方法とはいえないとする債権者の反論は十分首肯しうるところである。