全 情 報

ID番号 00874
事件名 賃金請求事件
いわゆる事件名 福岡ラッキータクシー事件
争点
事案概要  タクシー乗務員である原告らが運行記録計紙の装着拒否闘争を行ったところ使用者が賃金を支払わないためその支払を、又、予備的に休業手当(労働基準法二六条)の支払を求めた事例。(棄却)
参照法条 労働基準法24条,26条
民法413条
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 争議行為・組合活動と賃金請求権
賃金(民事) / 休業手当 / 休業手当の意義
賃金(民事) / 休業手当 / 部分スト・一部ストと休業手当
裁判年月日 1982年6月14日
裁判所名 福岡地
裁判形式 判決
事件番号 昭和52年 (ワ) 1649 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 労働民例集33巻3号505頁/時報1053号171頁/タイムズ481号118頁/労経速報1122号13頁/労働判例388号30頁
審級関係 控訴審/01031/福岡高/昭60. 9.28/昭和57年(ネ)413号
評釈論文
判決理由  〔賃金―賃金請求権の発生―争議行為・組合活動と賃金請求権〕
 労働者が支払を受ける賃金は、労働者が労働契約の内容に従い使用者の指揮命令の下に労務を提供する場合に初めて発生すると解すべきである。本件につきこれをみるに、被告会社においては、チャート紙の装着が労働契約上乗務員の義務とされており、組合員らはその装着を争議行為として拒否したものであるところ、前掲運輸規則二三条の三第二項によれば、タクシー事業者には、個人タクシー事業者を除き運行記録計による記録が義務付けられ、同規則三二条の二第九号を合わせ考えれば、チャート紙の装着を欠いて運行記録計により記録することのできないタクシーを運行することは、同規則上禁止されているものと解せられるから、原告らによるチャート紙装着の拒否はタクシーの運行を法律上不能ならしめ、たとえ本件闘争期間中原告らが就労(タクシー乗務)すべく待機していたとしても無意味であって労働契約の内容に従った適法な労務の提供とはいえず、その待機ゆえに原告らに本件闘争期間中の賃金請求権が発生するということはできない。
〔賃金―休業手当―休業手当の意義、部分スト・一部ストと休業手当〕
 原告らは、予備的に、労働基準法二六条に基づき休業手当の請求をしているが、右2で論じたところから明らかなように、原告らが本件闘争期間中に就労(タクシー乗務)できなかったのは、原告ら組合員が争議行為としてチャート紙装着を拒否したことに原因があると解されるから、原告らの右不就労をもって同条にいう「使用者の責に帰すべき事由」によるものともいうことはできず、原告らの休業手当の請求は理由がない。