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ID番号 00935
事件名 賃金請求事件
いわゆる事件名 明星電気事件
争点
事案概要  第一組合のストライキにより就労不能となった第二組合員の賃金および休業手当(附加金)の請求がなされた事例。(休業手当(附加金)請求について認容)
参照法条 労働基準法26条,114条
体系項目 賃金(民事) / 休業手当 / 部分スト・一部ストと休業手当
裁判年月日 1963年11月14日
裁判所名 前橋地
裁判形式 判決
事件番号 昭和37年 (ワ) 69 
裁判結果 一部認容
出典 労働民例集14巻6号1419頁/時報355号71頁
審級関係
評釈論文 緒方節郎・新版労働判例百選〔別冊ジュリスト13号〕198頁/小林一俊・労働経済旬報570号9頁
判決理由  第三 附加金の支払を求める予備的請求について。
 前記当事者間に争いのない事実および第二、一、(三)に認定した事実を併せ考えれば、原告らは、第一組合のスト期間中労働基準法第二六条の「休業」に該当したことは明らかである。そこで右休業が同条にいう「使用者の責に帰すべき事由」によるものかどうかを検討する。ここに「使用者の責に帰すべき事由」とは、民法上の帰責事由(民法四一五・五三五・五三六・五四三・六九三条など)の概念とは、よって立つ社会的基盤を異にし、労働者の生活保障という観点から規定されているのであるから、民法上の概念としては故意、過失或いは信義則上これと同視すべき事由とされるのに対し、本条にあってはこれよりも広く、したがって不可抗力に該当しない使用者の管理上ないし経営上の責任を含むものと解すべきである。
 本件についてこれをみるに、第一組合のストによる原告らの休業が、被告会社の故意、過失或いは信義則上これと同視すべき事由によって生じたものとは認められないことは前記第二、一の(二)、(三)に説示したとおりである。しかしながら、被告会社伊勢崎工場という一企業の内部に起った経済ストに起因するものであるから、一般に企業の内面における経済政策上の事由をもって不可抗力となし得ないと同様に、会社は不可抗力を主張しえないというべきである。従って、被告会社は原告らに対し本件スト期間中の休業手当を支払うべき義務があるわけである。その額については、労働基準法第二六条では「平均賃金の百分の六十以上」となっているが、労働協約ないし就業規則によって、一〇〇分の六〇以上を支払うべき旨定めていない限り、法律上支払を強制し得るのは、一〇〇分の六〇に限定されるものと解するのを相当とするところ、原告らの主張する昭和三五年五月三日の約定も、前記第二の二に説示したとおり、労働協約としての効力は認められないのであり、他にかかる点につき主張立証のない本件においては、原告らに支払われるべき休業手当は休業期間中の賃金(別表「合計額」欄記載のとおり)の一〇〇分の六〇に限られるものといわねばならない。