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ID番号 00937
事件名 賃金請求事件
いわゆる事件名 ノースウエスト航空事件
争点
事案概要  組合の、ストライキのためにストライキを実施しなかった事業所での就労が不要であるとして使用者がなした休業命令につき、右命令の合理性はないとして賃金の支払を求め、また予備的に休業手当の支払を求めた事例。
参照法条 労働基準法26条
民法413条,536条2項
体系項目 賃金(民事) / 休業手当 / 休業手当の意義
賃金(民事) / 休業手当 / 部分スト・一部ストと休業手当
裁判年月日 1980年2月18日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和52年 (ワ) 4228 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 労働民例集31巻1号199頁/時報961号116頁/労働判例335号14頁/労経速報1051号16頁
審級関係 上告審/03074/最高二小/昭62. 7.17/昭和57年(オ)1189号
評釈論文 伊達隆英・労百選〔四版〕214頁/木村五郎・昭和55年度重要判例解説〔ジュリスト743号〕234頁
判決理由  労働基準法二六条に定める「使用者の責に帰すべき事由」とは、休業手当の支払が休業中における労働者の生活を保障する趣旨にあると解せられることに照せば、民法五三六条二項に定める「債権者ノ責ニ帰スヘキ事由」よりも広く、使用者に過失を肯定することが困難な材料不足などのいわゆる経営上の障害をも含むものと解すべきである。しかし、ストライキを含む一切の争議行為は、労働者の団体がその意思決定に基づき、その目的を達するために行なうものであって、使用者に争議行為を停止する権限はないから、労働者の争議行為によって残った労働者を就労させることが無価値となった場合には、使用者が不当な目的をもって殊更に労働者をして争議行為を行なわせるように企図したり、争議行為に至る経過について使用者の態度に非難されるべき点がある等特段の事由がない限り、労働基準法二六条に定める「使用者の責に帰すべき事由」に該当しないと解するのが相当である。
 (中 略)
 これを本件についてみるに、被告が原告らに対し休業を命じたのは、被告の示した改善案に反対して行なわれたストライキの実効確保のため実施された本件車両占拠の影響によって原告らを就労させることが無価値になったことに基因すると認められるところ、被告の右改善案の内容が職業安定法に違反すると解するに足る事実は認められず、かえって、被告は、職業安定法に牴触するおそれのある搭載課の作業内容を改めるため、右改善案を実施しようとしたものと認められるから、被告が右改善案を示したことをもって、被告が不当な目的をもって殊更に組合員をして車両占拠を行なわせようと企図したとも、車両占拠(ないし本件ストライキ)に至る経過について被告の態度に非難されるべき点があるとも認めることは困難である。