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ID番号 00985
事件名 賃金請求事件
いわゆる事件名 岩手医科大学事件
争点
事案概要  勤勉手当の算定にあたって、争議行為による不就労日を理由に手当額の基礎となる期間率を一〇〇分の九〇とした使用者に対して、争議行為による不就労日を勤務期間として扱い、一〇〇分の一〇〇の期間率に基づいて算定された勤勉手当の支払が求められた事例。(請求棄却)
参照法条 労働基準法24条1項
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 争議行為・組合活動と賃金請求権
裁判年月日 1977年10月27日
裁判所名 盛岡地
裁判形式 判決
事件番号 昭和47年 (ワ) 243 
昭和48年 (ワ) 197 
裁判結果 棄却
出典 労働判例286号83頁
審級関係
評釈論文 青野覚・労働判例292号11頁
判決理由  一般に、いわゆる期末手当が定額または定率によって配分される生活保障的色彩の強いものであるのに対し、勤勉手当は、制度上も、個人の勤務成績に対応する能率給的なものとされていると解するのが相当である(前記給与条例三九条参照)。そして勤勉手当は、任命権者が支給割合を決定して初めて具体的な支給額が確定するもので、その性格上勤務成積の評価が不可欠であるが、その評価については、形式的な勤務期間に対応してその勤務状況を客観的に示す期間率と、勤務の実績を示す成績率とがほぼ同等の重みをもつ評定要素とされているのである。そして右の期間率は、単に、当該期間中にどれだけの期間勤務したかを測ることによって、能率が上がったか否かを裁量の余地をいれずに一率に把握しようとするものであって、不就労の日があれば、そのこと自体が、事由の如何を問わず、原則として期間率に反映されることになるわけである。正当な争議行為による不就労の場合にも、債務不履行や不法行為の責任が生じないというだけで、労働契約に基づく労務提供がないことには変わりがないから、それが期間率に反映され、能率の低下として評価されたとしても、勤勉手当の能率給的性格に照らしやむを得ないものといわなければならない。したがって、本件において被告が原告らの勤勉手当についていわゆる減額をしたことが、争議権を否定するものであるとか、不当労働行為を構成するとかはいえない。
 (中 略)
 被告が、原告らに対する本件各勤勉手当について、争議行為による不就労期間の除算をしてその期間率を「一〇〇分の九〇」と決定したのは相当であって、被告としてそれを「一〇〇分の一〇〇」とすべき義務はなかったものといわなければならない。