全 情 報

ID番号 00999
事件名
いわゆる事件名 国鉄室蘭駅事件
争点
事案概要  ストライキにより同一組合の組合員が就労できなかった場合、賃金請求権は就労の意思いかんにかかわらず発生するか否かが争われた事例。(消極)
参照法条 民法623条
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 争議行為・組合活動と賃金請求権
裁判年月日 1964年4月6日
裁判所名 札幌地室蘭支
裁判形式 判決
事件番号
裁判結果
出典 労経速報498号4頁
審級関係
評釈論文
判決理由  元来労働契約とは、被傭者がその労働力を一定時間使用者の処分に委ね、使用者の指揮に従って労務を提供することを約し、使用者は労働力の対価として賃金を被傭者に支払うことを約することによって成立する契約であるから、賃金請求権は、被傭者が使用者の支配圏内に入り、その労働力を使用者の処分に委ねることすなわち労働力の職場編入によって発生するものと解すべきであり、一旦労働力が職場に編入された以上、被傭者が現実に債務の本旨に従った労務に従事しなくとも、それが被傭者の責に帰すべき事由による場合を除きその賃金請求権を失ういわれはないのであるが、もともと使用者の処分に委ねられた労働力は、現実には継続的な労務への従事ということによってよくその契約目的に奉仕し得るものであるから、労務の給付が継続的、反復的である場合に、債務者たる労働者がその一部の労務の給付を行わないような場合にはそれが労働者の責に帰すべき事由によるものであるかぎり、その不給付の労務の量質に相応する部分について使用者はその賃金を支払う必要がないことは多言をまつまでもない。そして本件においては、原告らは、重機掛詰所において、担当助役の点呼を受けたことにより使用者である被告の支配下に入り、その労働力は職場に編入され、賃金請求権は一応発生したものと認められるのであるが、原告らが同年二月一日から同月九日までの闘争期間中、さきに認定したような背景のもとにピケ隊員と相通じて相当の機械における就労を拒否したことに外ならないと解せられる以上、まさしくこれは原告らが自己らの責に帰すべき事由に基き被告に対し債務の本旨に従って履行をしなかったものというべきであって、特に被告の指示に従ってなした行為以外の部分については、その部分に対応する賃金請求権を有しないことは自明の理である。