全 情 報

ID番号 01010
事件名 賃金請求事件
いわゆる事件名 岡山電気軌道事件
争点
事案概要  ストライキの場合の賃金控除を定める労働協約に基づいて、祝日手当の控除がなされたので、組合員らが右手当の支払を請求した事例。(請求認容)
参照法条 労働基準法24条
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 争議行為・組合活動と賃金請求権
裁判年月日 1972年4月13日
裁判所名 岡山地
裁判形式 判決
事件番号 昭和41年 (ワ) 582 
裁判結果 認容
出典 時報673号89頁/タイムズ280号303頁
審級関係
評釈論文 花見忠ほか・労働判例154号29頁/香川孝三・ジュリスト529号140頁/佐伯事務所・月刊労働問題175号124頁
判決理由  右のような本件祝日手当が設けられた経緯をふまえたうえで、労働協約第九六条との対比において考察するに、労働協約第九六条が争議行為に参加した組合員に対してはその日数および時間に対する一切の賃金は支払わない旨を定めていることは当事者間に争いがなく、また、前顕甲第二号証によれば祝日手当は賃金規定にいう賃金にほかならないことが認められるので、言葉の形式的な意味で、祝日手当が労働協約第九六条にいう「一切の賃金」に該当するということにはなるのであるが、しかし、証人A、Bの各証言によれば、被告会社においては、家族手当、精勤手当、通勤手当については、いわゆるストライキ自体による賃金カットは行なわれておらず、ただ、ストライキが長期にわたるような場合に、支給基準の日数が足らなくなったことにより支給されなくなるものであることが認められることからすると、労働協約第九六条にいう「一切の賃金」は、必らずしも賃金規程にいう賃金のすべてを指すものとも解されず、右の家族手当のように、いわゆる狭い意味の「労働の対価」として支給されるものではない賃金は右の賃金に含まれないものとの解釈のもとに右条項の適用がなされていると考えざるをえない。
 ところで、本件祝日手当は、さきにみたように、組合の国民の祝日を全部有給休日にせよとの要求に対し、被告会社の業務の性質からそれが不可能であるため、国民の祝日は原則として労働日とすることとし、そのかわり、その日の労働に対して祝日手当を支給するということで当初合意をみたのであるが、その後、組合より従前の賃金計算方式との対比のもとにおける要求により、結局、当該祝日において、週休、その他特定休暇、欠勤等により当該従業員が労働しない場合にも支給されるようになるにいたったもので、しかも、会社の承認を得たものについては欠勤扱いを受けることなく休むことができ賃金と同額の祝日手当の支給を受けるといういわば有給休日的な面も持っており、加えて無断欠勤の場合においてさえ支給されるものであることを勘案すれば、本件祝日手当は、いわゆる狭い意味の「労働対価」として支給されるものではなく、生活補助費の性質を有するものと言うことができるから、労働協約第九六条にいう「一切の賃金」には該らないものと解すべく、右祝日手当の性格からして、ストライキによる不就労の場合でもこれを給付すべき義務を被告会社は負うと解するのが相当である。