全 情 報

ID番号 01038
事件名 賃金支払控訴事件
いわゆる事件名 全日本検数協会事件
争点
事案概要  就業時間中の組合活動については特別のカット率を定める労働慣行があるとして、一日につき二五分の一をカットされた被控訴人らが差額の支払を求めた事例。(一審 認容、二審 原判決取消、請求棄却)
参照法条 労働基準法24条1項
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 争議行為・組合活動と賃金請求権
裁判年月日 1982年8月18日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 昭和53年 (ネ) 1379 
裁判結果 取消(確定)
出典 労働民例集33巻4号760頁/時報1060号141頁/労経速報1128号6頁/労働判例395号27頁
審級関係 一審/01025/大阪地/昭53. 8. 9/昭和46年(ワ)5596号
評釈論文 今野順夫・労働判例404号11頁/道幸哲也・季刊労働法127号102頁/蓼沼謙一・判例評論292号62頁
判決理由  「協会側が樹立を企図した新しい労使関係が組合及び各個の組合員の経済的条件に対する大巾な不利益変更となるため、組合側の強い抵抗を受けて一気に協会の意図どおりには実現せず、両者の現実的に妥協した過渡的状況として、前判示のような同年末以降の賃金カットの取扱いとなったのであるが、右取扱いが必ずしも明確な基準の下に統一的に行われたものでないことは、前記のとおり協会内の各支部で扱いを異にしたり、同一支部内でも大阪支部におけるように五〇分の一及び二五分の一の各カット率の適用場面の予定があったとはいえ、右予定に反し業務繁忙を理由に就業を命ぜられたのにこれを無視して組合欠勤に及んだ場合には闘争中でなくとも二五分の一カットをなしたこともあり、闘争中であっても全額保障したことも、五〇分の一カットにとどめたこともあったことにより明らかであって、このことは、右取扱いがその時期、その場所における労使関係の具体的な事情やその背景をなす執務環境の変化に応じて変更されるものであることを考慮に入れてなされた過渡的取扱いとして、かなり便宜的、流動的なものであったことを裏付けるものというべきであり、そうすると右取扱いをもって既に慣行と評価しうるほどに固定化していたものとみることは困難である。」仮に慣行と評価しうるとしても、前判示のとおり地労委の勧告を受けて以来ノーワーク・ノーペイの原則の徹底化を企図していた協会としては、過渡的取扱いとして暫定的に右慣行に従って個別的労働関係を処理する意思を有していたものとみられることは否定できないとしても、協会がそれ以上に右慣行を固定的に受け取り、懸案の組合に対する経費援助問題を解決した後の段階においても、右慣行に従う意思を有していたものとみることはできない。
 (中 略)
 そうすると、五〇分の一カットの労働慣行の存在を前提として、被控訴人らの協会との間に被控訴人ら主張の内容の労働契約が成立した旨をいう被控訴人の主張は、認められない。