全 情 報

ID番号 01048
事件名 賞与・退職金請求控訴事件
いわゆる事件名 日活事件
争点
事案概要  賞与につき、会社と労組間に「資金の調達出来次第支給する」旨の確認書による合意がある場合、当該合意が個々の労働者への賞与の支払を拒否する根拠となりえるかどうかが争われた事例。
 退職金につき、経営不振に伴う人員削減の必要性から希望退職者を募集する際に、これに応じた者には優遇措置を講ずるが、残留者には将来の円滑な支払を保障し得ない旨の説明がなされている場合、残留者については「資金調達可能時まで退職金の支払を猶予する」旨の了解があったかどうかが争われた事例。(一審 請求一部認容、二審 控訴人敗訴部分取消、請求認容)
参照法条 労働基準法11条,24条1項
体系項目 賃金(民事) / 賞与・ボーナス・一時金 / 賞与請求権
裁判年月日 1977年5月30日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和50年 (ネ) 2415 
昭和51年 (ネ) 100 
裁判結果 取消
出典 東高民時報28巻5号114頁
審級関係
評釈論文
判決理由  以上の認定事実によると、被控訴会社においては賞与の支給条件があらかじめ定められていて、被控訴会社にはその支払義務があり、労組との交渉を経たうえで支給額を決定し、遅滞なく支払うことになっているものと推認され、右賞与は労基法第一一条にいう賃金にあたることは明らかである。
 ところで、被控訴会社とA労組との間で合意された「資金の調達出来次第支給する」とは、賞与の支給を専ら被控訴会社側の事情にかからしめていて不確定期限を付した場合に等しいといえるから、それでは被控訴会社の恩恵的給付となっても賃金と呼ぶにはふさわしいといえないので、右の合意は労基法第二四条の趣旨に反することは明らかである。したがって、右合意の趣旨は、A労組が各組合員をして賞与の請求を、被控訴会社が財政的に支給できると判断される時まで控えさせることを約して被控訴会社の財政的窮乏に理解と同情を示したものであり、法律的な意味において本来の支給期限を延期することまで認めたものではないと解するのが相当であり、被控訴会社は右の合意をたてに、A労組の約束にかかわらず個々の組合員が自らの意思で賞与を請求する場合には、その支払いを拒むことはできないものと解すべきである。