全 情 報

ID番号 01049
事件名 預り金等請求事件
いわゆる事件名 梶鋳造所事件
争点
事案概要  登録簿上取締役たる地位にあった者が給与、賞与等に不足分があったとしてその支払いを求めた事例。
参照法条 労働基準法24条1項
民法624条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 取締役・監査役
賃金(民事) / 賞与・ボーナス・一時金 / 支給日在籍制度
裁判年月日 1980年10月8日
裁判所名 名古屋地
裁判形式 判決
事件番号 昭和54年 (ワ) 1465 
裁判結果 一部認容
出典 労経速報1065号3頁/労働判例353号46頁
審級関係
評釈論文
判決理由  原告は、毎年一定時期に賞与を支給するとしながら支給日に在籍しない一事をもって賞与請求権を失うとする右賞与支給規定の条項は労働基準法の規定に照らし無効である旨主張するが賞与は勤務時間で把握される勤務に対する直接的な対価ではなく、従業員が一定期間勤務したことに対して、その勤務成績に応じて支給される本来の給与とは別の包括的対価であって、一般にその金額はあらかじめ確定していないものである。従って労務提供があれば使用者からその対価として必ず支払われる雇用契約上の本来的債務(賃金)とは異なり、契約によって賞与を支払わないものもあれば、一定条件のもとで支払う旨定めるものもあって、賞与を支給するか否か、支給するとして如何なる条件のもとで支払うかはすべて当事者間の特別の約定(ないしは就業規則等)によって定まるというべきである。従って被告が賞与支給条件に関する就業規則(賞与支給規定)においてそれらを規定すること自体は違法とはいえず、かくして確定した賞与金を、右規定によって認められる賞与金請求権者に全額支払う限り労働基準法二四条一項に抵触するものではない。
 以上の如く賞与支給規定において、支給日に在籍しない従業員には支給しない旨定めがある場合、支給日直前に退職した従業員には同期の賞与は全く支給されず一見酷のようであるが、さればといって常に退職から支給日までの分を日割減額した残額を請求できると解するのも賞与の性質に反し相当でなく労基法も賞与につきそこまで要求しているとは解し難い。結局右のような結果は、右規定の条件を承認して雇用契約を締結し、右支給条件を承知しながら支給日前に退職した結果であってやむを得ないというべきである。