全 情 報

ID番号 01064
事件名 退職金請求控訴事件
いわゆる事件名 根上製作所事件
争点
事案概要  退職金の支給条件につき、本俸月額に勤続年数を乗じる方法が定められている場合、右本俸が極めて少額であり、各種手当が支払われているときの計算方法が争われた事例。
参照法条 労働基準法11条,89条1項3号の2
体系項目 賃金(民事) / 退職金 / 退職金請求権および支給規程の解釈・計算
裁判年月日 1958年4月7日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和31年 (ネ) 1938 
昭和31年 (ネ) 1939 
裁判結果
出典 下級民集9巻4号594頁/東高民時報9巻5号69頁
審級関係
評釈論文
判決理由  被控訴人らは、被控訴人らの退職時の本俸月額は、被控訴人Y1は金三万一千円、被控訴人Y2は金二万一千円であると主張するが、これを認めるに足る証拠がなく、当審証人Aの証言により成立を認め得る乙第八号によれば、昭和二十四年七月頃被控訴人Y2は本俸九百円物価手当八百円家族手当三百円職務手当三千八百円販売外務手当五百円特別手当二千二百円能率給千二百円合計金九千七百円にて、これより税金、健康保険料、厚生年金、失業保険料などを控除し手取り金八千九百二十八円であり、被控訴人Y1は本俸二千三百円物価手当八百円家族手当九百円職務手当五千八百円特別手当三千四百円能率給千八百円合計金一万五千円にてこれより税金、健康保険、厚生年金、失業保険料などを控除し手取り金一万三千八百五十七円であることが認められ、当審証人Aの証言により成立を認め得る乙第七号証の一、二によれば、昭和二十六年七月分として、被控訴人Y1は本俸二千三百円物価手当千円家族手当千円職務手当七千八百円であることが認められ、これらの事実によれば本俸と称する給与が極めて少額であり、職務手当物価手当特別手当能率給が一率に支給され、むしろこの給与が全給与の主要な部分を占めていることが明らかであって、社則第八十九条のいわゆる本俸月額とは、労務の対価として毎月支給される一定の固定給与を指すものと解すべきであるから前記の如く諸手当が一率に支給されこれらが給与の主要部分を占めるときには、これらの手当は臨時的或は特別の暫定手当である意味を失い、名義の如何を問わずむしろ固定給与の一部となったものであると解するのが相当であって、前記給与中家族手当販売外務手当を除くその余の給与をもっていわゆる本俸月額と解すべきである。