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ID番号 01185
事件名 時間外労働割増金等請求控訴、同附帯控訴事件
いわゆる事件名 清瀬市事件
争点
事案概要  妻と共に給水場に住み込んで勤務してきた原告が、一日二四時間休日なしに労働したと主張して、時間外労働及び休日労働並びに深夜労働につき各割増賃金の支払を求めた事例。(一部認容)
参照法条 労働基準法32条,37条,114条
体系項目 労働時間(民事) / 労働時間の概念 / 住み込みと労働時間
雑則(民事) / 附加金
裁判年月日 1978年6月30日
裁判所名 東京地八王子支
裁判形式 判決
事件番号 昭和49年 (ワ) 549 
裁判結果 一部認容
出典 労働民例集33巻6号1127頁
審級関係
評釈論文
判決理由  〔労働時間―労働時間の概念―住み込みと労働時間〕
 右(1)及び(2)の各事実によれば、本件雇傭契約においては、原告の職務は、第三給水場に妻とともに住み込みのうえ、妻を履行補助者として使用し、給水機械の管理(操作・点検・監視等)をすることであるが、それは平日、土曜日、休日の区別なく、常に、正規の勤務時間を超えて、夜間或いは早朝にも、相当時間右労務に服すべきことを予定されたものであるというべきである。
 (中 略)
 しかしながら、一日のすべての時間が前記各労働にあてられていたわけではない。即ち、住み込みということで職場と住居が一致していたので、原告は右労働を行なう時間のほかは、家事、休憩、著作の執筆などの私的生活に時間を用いていた。また原告の妻も、原告が睡眠している間は、常に代わって労働したというわけではない。
 しかし、原告が右私的生活に用いていた時間で、かつ原告の妻が代わって労働に従事していなかった時間は、昼休みの休憩を除いて、多くとも一日六時間を超えることはなかった(なお、土曜日・休日においても平日と同程度の昼休みの休憩(四五分間)をとっていたものであるから、土曜日・休日においては、右私的時間は六時間四五分ということになる。)
 〔雑則―附加金〕
 1 労働基準法一一四条の附加金は、同法の規定違背に対する一種の民事的制裁としての性質を有し、労働者の請求に基づいて裁判所の命令によって課せられ、その命令をまってはじめて使用者の支払義務が発生するものである。従って使用者に同法三七条の違反があっても、既に超過労働割増賃金額に相当する金額の支払をなし、或いは右割増賃金支払債務が時効によって消滅した場合には、労働者は、右支払ずみの割増賃金額或いは時効によって消滅した割増賃金支払債務に相当する金額について附加金の請求をなしえないものと解するのが相当である。
 2 ところで、本件においては、被告は原告に対し結局金六三万〇九八九円の超過労働及び深夜労働割増賃金の支払義務を負うのみであること前叙のとおりである。そうとすれば、原告は被告に対し、右金額に相当する別表(チ)欄記載の金額(合計額は同欄末尾合計額欄記載の六三万〇九八九円)についてのみ附加金の請求をなしうるものというべく、その余の金額については失当としてこれを棄却すべきものである。