全 情 報

ID番号 01186
事件名 就業規則無効確認請求控訴事件
いわゆる事件名 佐野安船渠事件
争点
事案概要  使用者がなした就業規則の変更につき、右変更は労働協約の規定に反するものであるとして、労働協約の右規定が効力を有することの確認を求めた事例。
参照法条 労働基準法89条1項1号
体系項目 就業規則(民事) / 就業規則の一方的不利益変更 / 労働時間・休日
裁判年月日 1980年4月24日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 昭和54年 (ネ) 893 
裁判結果 一部取消差戻 一部変更(確定)
出典 労働民例集31巻2号524頁/時報975号114頁/労働判例343号50頁/労経速報1057号3頁
審級関係 一審/01509/大阪地/昭54. 5.17/昭和49年(ワ)111号
評釈論文 萩沢清彦・ジュリスト741号142頁/萩沢清彦・判例評論267号44頁/名古道功・日本労働法学会誌57号139頁
判決理由  昭和四七年四月八日頃までにおける被控訴人の従業員の一日の定時実働労働時間等についての協議や合意、就業規則の作成等は、すべて本件協約の適用上の解釈に関するものであって、昭和三九年の前記合意の内容は、明確であるうえ、前記見解に照らして合理的なものと認められるから、被控訴人は、本件協約のうち一日の定時実働労働時間等に関する条項につき右合意によって解釈・補正されたもの、すなわち、被控訴人の従業員の一日の定時実働労働時間は七時間、その始業時刻は午前八時、終業時刻は午後三時四五分、休憩時間は午前一一時四五分から午後零時三〇分までとする旨の実質的な意味での本件協約に拘束され、これに反する就業規則を作成することは許されないものというべきである。
 (中 略)
 しかしながら、《証拠略》によれば、被控訴人は、昭和四八年八月二四日に労務部長名義の書面で各部課長に対し従業員に昭和四八年規則に従った勤務態様を遵守させるように指示し、同月二七日には社内掲示書により全従業員に対し、昭和四八年規則に従って勤務するよう命じるとともに、これに従わない従業員には賃金カット及びその他の措置をとることがある旨を警告したことが認められ、右の事実、《証拠略》を総合すると、同控訴人は、昭和四八年四月二四日以降において、その直属上司等から、前記労務部長名義の書面による指示どおり昭和四八年規則に従って勤務するように命ぜられ、これに従わないときは人事考課上等で不利益な査定を受け、又懲戒処分を受けるかも知れない旨告知されたこと、同控訴人は昭和四八年規則が実施された当初から前記労働契約どおりの態様で勤務していたが、右のような告知を受けたため、昭和五一年七月頃以降昭和四八年規則に従って勤務せざるをえなくなった(但し、その後も、青年婦人部の組合員数名とともに、月一回、反対の意思表示の行動を続けていた。)ことが認められる。
 右認定の事実によれば、被控訴人の同控訴人に対する右取扱いは、同控訴人に対して労働契約に定めのないことを命じる等してはならない義務に違反する違法なものというべきである。