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ID番号 01235
事件名 懲戒処分取消請求事件
いわゆる事件名 北九州市事件
争点
事案概要  市長がなした懲戒処分につき、裁量権の濫用がある等として右処分の取消を求めた事例。
参照法条 労働基準法32条,35条,36条
地方公務員法28条
地方公営企業労働関係法7条
体系項目 労働時間(民事) / 法内残業 / 残業義務
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の濫用
裁判年月日 1981年8月24日
裁判所名 福岡地
裁判形式 判決
事件番号 昭和45年 (行ウ) 18 
裁判結果 棄却
出典 労働民例集32巻3・4合併号513頁
審級関係 控訴審/01334/福岡高/昭59. 7.19/昭和56年(行コ)21号
評釈論文
判決理由 〔労働時間―法内残業―残業義務〕
 労基法三二条には労働時間の制限、同法三五条には休日(いわゆる週休制による休日)についての定めがあるけれども、週休制による休日以外の休日(いわゆる法定外休日)に労働者を労働させる場合に関しては、労基法に何らの規定がなく同法による規制が及ばないから、地方公共団体の長の制定した就業規則ないしは労働協約に法定外休日勤務に関する定めがある場合には、労働条件の基準として個々の職員の同意なくして勤務関係の内容となり職員が法定外休日労働義務を負うことになると解するのが相当である。そして、法定外休日労働について、就業規則ないし労働協約において、日時、労働内容、労働すべき者が具体的に特定されている場合には、右長の休日出勤命令を待つまでもなくそのとおりの休日労働義務が生じるが、概括的一般的な労働義務が定められているにすぎないときは、右長の出勤命令によって休日労働義務が具体的に生ずるというべきである。この場合、出勤命令により労働を命じられた職員に損失を生ずることもあるであろうから、休日労働を命ずるに当っては職員の個人的利益を考慮する必要のあることはいうまでもなく、職員に出勤しないことについてのやむを得ない事由があるときは右休日労働の義務を免れることができるけれども、職員は、休日出勤命令を受けた後、休日労働の義務を免れるためには右のようなやむを得ない事由の存在について当局に対し告知することが必要である。なお、職員の告知した事由が出勤しないことについてのやむを得ない事由に該当するか否かは、法定外休日出勤を命ずる当局側の必要性と職員の拒否事由の合理性との利益衡量によって判断するのが相当である。
〔懲戒・懲戒解雇―懲戒権の濫用〕
 地方公務員につき、地公法に定められた懲戒事由がある場合に、懲戒処分を行なうかどうか、これを行なうときにいかなる処分を選ぶかは、懲戒権者の裁量に任されており、その裁量が恣意にわたることをえないものであることは当然であるが、懲戒権者が右の裁量権の行使としてした懲戒処分は、それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したと認められる場合でない限り、その裁量権の範囲内にあるものとして、違法とならないものというべきである(最高裁判所昭和四七年(行ツ)第五二号同五二年一二月二〇日第三小法廷判決・民集三一巻七号一一〇一頁参照)。