全 情 報

ID番号 01266
事件名 時間外勤務手当請求事件
いわゆる事件名 ゆうな学園事件
争点
事案概要  宿直勤務に対する割増賃金の支払を求めた事例。(認容)
参照法条 労働基準法32条,37条,41条3号
体系項目 賃金(民事) / 割増賃金 / 違法な時間外労働と割増賃金
労働時間(民事) / 労働時間・休憩・休日の適用除外 / 監視・断続労働
裁判年月日 1979年3月27日
裁判所名 那覇地
裁判形式 判決
事件番号 昭和53年 (ワ) 287 
裁判結果 認容(確定)
出典 時報943号114頁/労働判例325号66頁
審級関係
評釈論文
判決理由  〔賃金―割増賃金―違法な時間外労働と割増賃金〕
 労基法違反の宿直勤務による時間外勤務手当請求権の発生が容認される場合、これは夜間勤務の正規労働時間化の要求が実現をみることを意味し、県職労が目標とした夜勤月六回以内の点もすでに実現している一方、被告においてはその計画にかかる二直変則二交替制を実施するために必要な一寮六名の人員配置をすでに実現しているのであり、しかも、原告らは、二直変則二交替制の実施に伴って生ずべき早朝及び深夜の出退勤の不利益を、その希望どおり、被らずに済んでいるのであって、かかる現状を前提とした場合、原告らの請求は、少くともその附加金の請求に関して、権利の濫用にわたるとの疑いが少なからず存在する。
 しかしながら、交替制勤務採用に関する被告の具体的提案が県職労の下部組合員にどの程度周知せしめられたか、これに対する県職労ゆうな分会の対応如何、その態度決定に原告ら個々が果たした役割如何などの点は、原告らの請求が権利の濫用にわたるか否かの判断に際して是非考慮すべき点であると考えられるのであって、これらの点に関しては十分な立証がなされていないのみならず、ことは労働条件に関する問題であるから、労働側との間で円満な合意を得ようとした被告の方針はそれ自体非難に値しないにせよ、県職労執行部の下部との摩擦を懸念する態度を慮ばかるあまり、被告の取組み方が消極に流れた印象は拭えないのであって、無許可宿直という労基法違反の事態解消に至らない責任の全てを原告らに帰するのは失当であるというべきである。
 右の次第で、原告らの本件時間外勤務手当及び附加金の請求を権利の濫用にわたるものとすることはできない。
 〔労働時間―労働時間・休憩・休日の適用除外―監視・断続労働〕
 被告は、原告らの本件宿直勤務は、その勤務内容等実質において、労基法四一条三号にいう監視又は継続的労働、若しくは同法施行規則二三条にいう継続的業務に該当するから、右各法条に定める所轄の労働基準監督署長の許可を受けた者でなくとも、かかる労働に対する対価としては、時間外勤務手当の支払義務は発生しない旨主張するけれども、仮に本件宿直勤務が被告主張のごとき実質を有する労働であるとしても、本件において、労基法四一条三号や同法施行規則二三条に規定する労働基準監督署長の許可を受けていないことは、被告の自認するところであるから、被告は右各法条を適用することによって原告らに対する本件時間外勤務手当の支払義務を免れることはできないというべきである(東京高裁昭和四五年一一月二七日判決、行判集二一巻一一・一二号一三五六頁参照。)けだし、右各法条において労働基準監督署長の許可を要するとした趣旨は、監視又は断続的労働と一般の労働との区別は、実際には困難な場合が多く、監視・断続労働であることを口実に不当な労働時間形態がとられることもあり得るため、それが監視・断続的労働に該当するか否かを事前に労働基準監督署長に判断せしめ、労働者の保護を図ろうとしたところにあると解されるからである。