全 情 報

ID番号 01271
事件名 時間外手当等請求事件
いわゆる事件名 両備運輸事件
争点
事案概要  会社が組合との協定により支給していた「割増賃金」も時間外割増賃金の算定基礎に入れるべきだとして原告らが差額分の支払を求めた事例。(棄却)
参照法条 労働基準法37条2項
体系項目 賃金(民事) / 割増賃金 / 割増賃金の算定方法
裁判年月日 1982年5月28日
裁判所名 山口地宇部支
裁判形式 判決
事件番号 昭和53年 (ワ) 84 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1123号19頁
審級関係
評釈論文
判決理由  2 ところで、労働基準法三七条一項によれば、使用者が労働者に対して時間外労働又は深夜労働をさせた場合、その労働時間については、通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならないこととされているので、これを本件についてみるに、(書証略)によれば、次の式により計算される。
 時間外労働の割増賃金
 {その月に支払われた基準給(前記(1)ないし(4)}÷200.7(時間)×1.25×時間外労働時間+{(その月に支払われた前記(5)ないし(8)の手当の合計額)}÷(200.7(時間))×1.25×時間外労働時間+{前期(9)及び(10)の手当額の合計額}÷8(時間)×1.25×時間外労働時間
 深夜労働の割増賃金
 {その月に支払われた基準給(前記(1)ないし(4)}÷200.7(時間))×0.25×深夜労働時間+{その月に支払われた前記(5)ないし(8)の手当の合計額}÷200.7(時間))×0.25×深夜労働時間+{前記(9)及び(10)の日額の合計額}÷8(時間))×0.25×深夜労働時間
 3 ところで、原告は、右各式によることを前提としつつ、右(5)ないし(10)の各手当額については、協定割増賃金額を使用すべきであると主張するが、(書証・人証略)によれば、協定割増賃金は、実際の時間外の労働時間数に従つて支払われているとはいえないにしても、もともと割増賃金として定められたものであり、本来の手当額は別に定まつており、これを原告ら主張のように本件割増賃金計算の基礎にするとすれば、被告会社としては二重に割増賃金を支払う結果となり、到底妥当とはいい難い。これに反する(人証略)はにわかに採用することができず、結局この点に関する原告らの主張は採用できない。
 4 そして、(書証・人証略)によれば、被告会社は原告らに対し、本件割増賃金につき、前記各式の前記(5)ないし(10)の各手当額に、原告らの現実の労働時間による手当額を当てはめて計算した場合の金額より、多額の金員の支払をなしていることが認められるから、結局被告会社には、本件割増賃金の未払はないというべきである。