全 情 報

ID番号 01280
事件名 賃金請求事件
いわゆる事件名 関西汽船事件
争点
事案概要  所定勤務の他に事務所等の清掃のための早朝勤務に従事し、早朝勤務に対しては割増賃金が支払われていたが、会社が右清掃業務を外注化し、早朝業務をなくしたため、早朝勤務は労働契約上の権利であり、会社に債務不履行があるとして賃金請求がなされたが、右請求が棄却された事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法37条
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 仕事の不賦与と賃金
労働時間(民事) / 法内残業 / 残業義務
労働時間(民事) / 時間外・休日労働 / 時間外労働、保障協定・規定
裁判年月日 1986年1月29日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 昭和58年 (ワ) 4635 
裁判結果 棄却
出典 労働判例469号38頁/労経速報1250号16頁
審級関係
評釈論文
判決理由  〔賃金-賃金請求の発生-仕事の不賦与と賃金〕
 〔労働時間-法内残業-残業義務〕
 原告らは、原告らの早朝勤務が雇用契約に基づく所定時間内の労働であって、時間外労働ではないことを前提に、昭和五八年四月一三日以降被告会社が、原告らに早朝勤務の時間外労働を命じていないとして、その就労を一方的に拒否し、そのため原告らが早朝勤務の履行ができなくなつたのは、被告会社の責に帰すべき事由に基づくものであるから、被告会社は、原告らに対し、右同日以降も本件賃金を支払うべき義務を免れることができない旨主張する。
 然しながら、前記認定の事実関係からすれば、原告らは被告会社に小使職の労務社員として雇用ないし配置転換された際(原告X1は、昭和五一年一一月一日配置転換、同X2は、昭和四一年一〇月二〇日雇用)、被告会社から、他の小使職の労務社員の場合同、基本給、各種諸手当、賞与、退職金等の支給条件、分担すべき職務、勤務時間、服務規律、就業規則等の具体的な内容、殊に、小使職の労務社員に特有なものとして、通常、勤務時間の開始前の一定時間、時間外労働として、会社が指定する事務室等の清掃業務に従事してもらうこと、これに対して、会社は、清掃業務の実労働時間に応じて労働基準法三七条所定の割増賃金を時間外手当として支給すること等について詳細な説明をうけてこれを了解し、爾来、被告会社が原告らに早朝勤務を命じなくなった昭和五八年四月一三日まで、被告会社が定めた時間外労働実施の際手続に従って早朝勤務に従事し、その時間外手当として、本件賃金を異議なく受給してきたものであって、その間右手続がやや疎かになることがあり不備な面が生じたことがあっても後日必ずこれを補完され、全体として右早朝勤務が時間外労働として実施されたことに何ら問題がなかつたことが明らかに認められるところである。
従って、原告らの早朝勤務は、被告会社が原告らを小使職の労務社員として雇用ないし配置転換した際、予じめ包括的に、かつ、その後においても個別的に継続して、原告らに対し命じて実施された時間外労働と認めるのが相当であり、被告会社は、昭和五八年四月一三日以降原告らに対し、早朝勤務の時間外労働を命じていないのであるから、その労働の対価たる本件賃金を支払うべ義務がないことは明らかなところであって、原告らの右主張は理由がないという外ない。
 四 次に、原告らは、被告会社に小使職の労務社員として雇用ないし配置転換された際、被告会社が原告らに対し、雇用契約期間中、継続して時間外労働として原告らを早朝勤務に従事せしめ、本件賃金を支給する旨約したことを前提に、被告会社が、昭和五八年四月一三日以降原告らが早朝勤務に就労することを拒否し、右時間外労働の発令をせず、本件賃金を原告らに支給しないのは、雇用契約上の債務不履行に該る旨主張するが、被告会社は、右認定説示したとおり、原告らを小使職の労務社員として雇用ないし配置転換した際、原告らに対し、早朝勤務に関し、通常、時間外労働として会社が指定する事務室等の清掃業務に従事してもらうことになっていること等を説明し、これに対する原告らの了解を得ただけにとどまるのであって、これは、業務上の必要性が存する限度で、予じめ包括的に時間外労働として早朝勤務に従事するように原告らに命じ、その同意を得たというだけに過ぎず、時間外労働の性質からみても、業務上の必要性の有無に拘らず、雇用契約期間中、継続して時間外労働として原告らを早朝勤務に従事せしめる旨被告会社が約したものとは到底認め難いところであるから、原告らの右主張は理由がないという外ない。