全 情 報

ID番号 01295
事件名 懲戒処分取消請求事件
いわゆる事件名 大阪営林局西条営林署事件
争点
事案概要  全林野労組の大阪地本西条営林署分会役員らが、春闘の一環として行なった宿日直勤務命令拒否闘争について、公共企業体等労働関係法、国家公務員法に違反するとして、減給、戒告の各懲戒処分に付されたので、その取消を請求した事例。(請求認容)
参照法条 労働基準法36条,41条3号
体系項目 労働時間(民事) / 労働時間・休憩・休日の適用除外 / 宿日直
裁判年月日 1973年3月27日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 昭和39年 (行ウ) 118 
裁判結果 認容(控訴)
出典 労働民例集24巻1・2合併号112頁/時報698号17頁/訟務月報19巻7号110頁
審級関係 控訴審/01857/大阪高/昭54.12. 7/昭和48年(行コ)6号
評釈論文 奥山明良・ジュリスト583号154頁/林和彦・労働判例176号19頁
判決理由  労基則第二三条の規定内容、労基則上の位置関係などと労基法第四一条第三号の規定および同条を明示の根拠規定とする労基則第三四条の規定とを彼比照合すると、労基法第四一条第三号の規定と労基則第二三条の規定との間には原告ら指摘のように規定上種々不整合があることは否定し難い。しかし、労基法第四一条第三号は単に「監視又は断続的労働に従事する者で使用者が行政官庁の許可を受けた者」については労基法上の労働時間、休憩及び休日に関する規定を適用しない旨規定しているのみで、監視または断続的労働に従事する者が右労働を本務としているか、否かについては規定上明示していないことからすると、右規定をもって、直ちに本務として監視または断続的労働に従事する者のみに関する規定であるとは断定しがたい。それに、右規定が監視または断続的労働に従事する者につき行政官庁の許可を要件として労働時間等に関する労基法上の規制を除外したのは、監視、断続的労働はその労働の特性から比較的労働密度が稀薄で、右労働を通常の労働と同等に評価することは労基法上の均衡を失するところから、行政官庁の判断のもとに労基法上の労働時間等に関する法的規制を除外したとしても労働力保護の措置に背馳することはないとの趣旨によるものと解される。したがって、かかる観点よりすると、右規定によって規制の対象となる監視、断続的労働とは本務がかかる態様の労働であるばかりでなく、他の本務に従事する者が附随的に監視、断続的労働に従事する場合も、その本務と附随的労働を一体的にみて労働密度の点から過度の労働にわたらず、労基法上の労働時間等に関する法的規制を除外しても労働力保護の点に欠けるところがないと判断される場合にはそれに包含されるものと解するのが相当であって、労基則第二三条は宿日直が附随的断続的労働として一般的に労働密度も稀薄であり、その態様も軽易である点に着目し、これをその一態様として規定上明らかにしたものといえる。
 以上のとおりとすれば、労基則第二三条は労基法第四一条第三号を根拠とする規定というべきであるから、労基則第二三条の規定をもって労基法上の根拠を欠く違憲、無効の規定であるということはできない。また、労基則第二三条により所轄労基署長の許可があったときは同条では労働時間に関する労基法第三二条の規定のみを適用除外としているが、前記趣旨よりして宿日直勤務者は宿日直に従事しているかぎりで同法第三四条の休暇に関する規定および同法第三五条の休日に関する規定もそれぞれ適用を除外されるものと解するのが相当である。もっとも、労基則第二三条が挙示する様式一〇号の許可申請書に記載すべき事項はすべて宿日直に関する事項のみであって、本務に関する労働時間、勤務の態様等についてはなんらの記載を要求していないから、所轄労基署長が労基則第二三条の許可をするにあたって本務と附随的労働たる宿日直を一体的にみて許可基準を規制することができない点で問題なしとしないが、こと西条営林署の宿日直に関する限り、その勤務内容は断続的労働の中でも比較的軽易なものであり、その全体的運用において宿直の翌日は半休とされる休養タイムや準備時間が設置されるなど労働力保護上配慮されていたことはすでに認定したとおりであるから、同営林署の宿日直は労基法上根拠を欠くものということはできない。
 4 原告らは、本務外に行われる宿日直については労基則第二三条による労基署長の許可のほかに労基法第三六条による時間外協定の締結を必要とする旨主張する。しかし、宿日直勤務は一般的に労働密度も稀薄で勤務の内容も軽易であることなど、その労働の特性を考えると、それは通常の勤務時間の延長である超過労働と同一視し得るものではないし、それに、労基法はとくに右宿日直勤務の特性に着目し、労基則第二三条による所轄労基署長の許可に拠らしめることによって労働力の保護を図っているその趣旨、目的にかんがみれば、労基則第二三条による所轄労基署長の許可を受けたうえに、さらに労基法第三六条による時間外労働協定を締結しなければならないとする理由はないものといわなければならないから原告らの主張は採用できない。