全 情 報

ID番号 01343
事件名 懲戒処分無効確認請求
いわゆる事件名 和歌山県教組事件
争点
事案概要  一斉休暇闘争に際して指導的役割を果たしたことを理由として、懲戒免職処分に付された県教組幹部らが、当該処分の無効確認を請求した事例。(請求認容)
参照法条 労働基準法39条1項,2項,4項
体系項目 年休(民事) / 年休権の法的性質
年休(民事) / 年休の自由利用(利用目的) / 一斉休暇闘争・スト参加
裁判年月日 1975年6月9日
裁判所名 和歌山地
裁判形式 判決
事件番号 昭和34年 (行) 2 
裁判結果 認容
出典 時報780号3頁/タイムズ324号121頁
審級関係
評釈論文 井上孝美・教育委員会月報301号13頁/清水敏・早稲田法学51巻1・2合併号215頁/中山和久・季刊労働法97号4頁/兵頭厚子・別冊判タ2号274頁
判決理由  〔年休―年休権の法的性質〕
 ところで、年次有給休暇の権利についての基本原則は、労働基準法三九条の定めるところである。右権利は、同条一、二項の要件が充足されれば法律上当然に労働者に対して生ずるのであり、労働者の請求をまってはじめて発生するものではなく、同条三項にいう請求は休暇の時季の指定の意味に解すべきである。したがって、労働者がその有する休暇日数の範囲内において、休暇の始期、終期を特定して時季の指定をしたときは、同条三項但書所定の事由が存在し、しかもこれを理由に使用者が時季変更権の行使をしないかぎり、右指定によって年次有給休暇が法律上当然に成立し、当該労働日における就労義務が消滅するものと解される。すなわち、年次有給休暇の要件としては、労働者による休暇の請求や、使用者による承認を云々する余地はないものと解すべきである。
 そして、この理は、前記市町村立学校職員の年次有給休暇の権利についても同断であって、各条例、規則の意義も、右労働基準法の趣旨に即して解釈されなければならない。けだし、とくに市町村立学校職員に対してのみ、法律上除外する旨の規定がないのみならず、別異に解すべき合理的根拠がないからである。
 〔年休―年休の自由利用(利用目的)―一斉休暇闘争〕
 いわゆる一斉休暇闘争は、各事業場に所属する労働者が当該事業場における業務の正常な運営を阻害することを目的として、形式上「休暇」の名のもとに一斉に休暇届を提出し、職場を放棄、離脱することによって同盟罷業に入ることであると解される。すなわち、これは前叙の年次有給休暇の権利行使ではなく、単に形式上右権利行使の体裁を整えたものにすぎず、その実質においては同盟罷業にほかならないのである。したがって、このような場合においては、たとえ労働者が休暇日数の範囲内において時季を指定した休暇届を提出したとしても、それはもはや労働基準法にいう時季の指定としての法的効力を生ずるものではない。この点は、右休暇届に対して校長が承認を与えた場合においても何ら変りはない。
 いじょうの検討したところからも明らかなとおり、いわゆる一斉休暇闘争にあたるか否かの判断にあたっては、休暇届の利用目的、時季、形式、業務の阻害の程度、休暇の利用内容等あらゆる事情を総合して慎重に決しなければならない。とりわけ、労働者において休暇届が事実上承認されず、あるいはこれに対して時季変更権が行使される場合を予測していたか否か、およびその場合に備えていつも勤務し得る態勢にあったか否か、休暇届提出者の各事業場に占める比率はどうか、適切な時季変更権行使のため最小限必要な時間的余裕をおいて休暇届を提出したか否か等の点に留意することが肝要である。