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ID番号 01437
事件名 行政処分取消請求控訴事件
いわゆる事件名 高知郵便局事件
争点
事案概要  郵便集配業務に従事する郵政事務官らが、計画休暇付与予定日を変更されたにもかかわらず、当日休暇を取得したため、無届欠勤として戒告処分に付されたのに対してその取消しを求めた事例の控訴審。(請求を認容した原判決取消し)
参照法条 労働基準法39条4項
体系項目 年休(民事) / 時季変更権
年休(民事) / 年休の自由利用(利用目的)
裁判年月日 1979年11月21日
裁判所名 高松高
裁判形式 判決
事件番号 昭和51年 (行コ) 2 
裁判結果 取消(上告)
出典 時報971号109頁
審級関係 一審/01436/高知地/昭51. 2. 5/昭和48年(行ウ)1号
評釈論文 平野信博・法律のひろば33巻7号75頁/麻田正勝・昭和54年行政関係判例解説118頁
判決理由  〔年休―時季変更権、年休の自由利用(利用目的)〕
 被控訴人らは、計画休暇は、本質的には年次有給休暇と異なるものではないから、その時季変更権の行使は、労基法三九条三項但書の要件と同じく「事業の正常な運営を妨げる場合」にのみ許され、かつ事前に予測の困難な突発的事由の発生等特別の事情のあることが必要であると主張する。しかしながら、計画付与の対象となる休暇は、既述のとおり、労働協約等によって繰越使用を認められた前年度及び前々年度の有給休暇であって、労基法所定の年次有給休暇ではないから、その付与及び時季変更についても同法三九条三項に定めると同一の要件を必要とせず、年度当初に定められた休暇付与予定計画は、労使間に成立した労働協約の定めるところに従い、所属長においてこれを変更することができる。しかるところ、前記労働協約等によれば、所属長が、年度の途中において、年度当初に定めた休暇付与予定計画の変更を必要と認めたときは、当該年度中にその休暇を付与する場合に限り、業務の繁閑等をしん酌してこれを変更することができる旨規定されていることは前に述べたとおりである。労働協約等の右規定は、労基法三九条三項但書の定める基準とは異なり、所属長が、業務の繁閑等各種の事情を考慮し、その状況に応じた合理的判断のもとに休暇付与予定計画の変更が業務の遂行上必要であると認めたときは、年度の途中においても、これを変更することが許される旨の規定であると解するのが相当である。有給休暇が労基法所定のいわゆる法内休暇でないため同法三九条三項の規定が適用されない場合において、有給休暇の付与及びその時季変更に関し右規定と異なる労働協約等の定めは、もとより適法ではなく、それ自体有効であることはいうまでもない。してみれば、先に認定した事実関係のもとにおいて、高知郵便局集配課長が、被控訴人らの所属する集配課を基準として、その担当する業務の内容、性質、集配区域、要員配置の状況、代行者補充の難易、業務の臨時的繁忙その他諸般の事情を考慮し、被控訴人らの計画休暇を予定どおり実施した場合業務の遂行に支障があるものと認め、その付与予定計画を変更したことは、合理的な理由があり、いずれも適法かつ有効であると認められる。
 〔懲戒・懲戒解雇―懲戒事由―業務命令拒否・違反〕
 適法な休暇付与予定計画の変更を不服とし上司の出勤命令を無視して無断欠勤に及んだ被控訴人らの行為は、国家公務員法九八条一項、一〇一条一項前段に違反し、同法八二条一号及び二号に該当する。
 (中 略)
 郵便局集配職員が休暇の時季変更を不服とし上司の出勤命令を無視して無断欠勤に及んだ場合において、たとえ上司に休暇の取扱いにつき配慮の足りない点があったとしても、適法になされた休暇の時季変更に対し、職員が以上のような事実関係のもとで無断欠勤に及んだものであるときは、これを理由としてなされた戒告処分は懲戒権の濫用にあたるものとはいえない。