全 情 報

ID番号 01449
事件名 地位確認請求事件
いわゆる事件名 日本放送協会事件
争点
事案概要  使用者が、その許可を得ずに「業務」を営んだこと、無断欠勤したことを理由に懲戒解雇したことにつき、休暇の取得に承認は不要であり右解雇は無効である等として、従業員としての地位の確認を求めた事例。
参照法条 労働基準法39条4項,89条1項9号
体系項目 年休(民事) / 法定外年休
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 二重就職・競業避止
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務懈怠・欠勤
裁判年月日 1981年12月24日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和49年 (ワ) 10963 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 時報1036号109頁/労経速報1107号3頁/労働判例377号17頁
審級関係
評釈論文
判決理由  〔年休―法定外年休〕
 規則二二条一項は、「職員には、次のとおり有給休暇を付与する。」と定め、(一号には勤労休暇、二号には慰労休暇を定めている。)
 (中 略)
 NHKでは、勤労休暇を労働基準法三九条に定める年次有給休暇に相当するものと取り扱っている。昭和四八年に年次有給休暇に関する最高裁判所判決がでた後は、右判決に従い、勤労休暇付与の申出に対して承認という形をとることなく、時季変更権を行使しないという意味の確認をするよう指導している。これに対して、慰労休暇は、NHKが独自に定めた、永年勤続者に対する報奨的、恩恵的な休暇とみなし、慰労休暇票による上司の承認が必要であると取り扱っている。
 (中 略)
勤労休暇と慰労休暇との名称の違い、付与の資格、日数、方法の違い、及び、NHK内での取扱いに照せば、慰労休暇は、労働基準法三九条所定の有給休暇とは異なり、NHKが独自に定めた有給休暇であり、永年勤続者に対する報奨的、恩恵的な性格をもち、慰労休暇の付与を受けるには上司の承認が必要と認められる。そして、慰労休暇の付与を承認するか否かについては、慰労休暇の右認定のような性格からして、業務運営上の支障だけでなく、休暇の使用目的等をも考慮し得る場合があると解するのが相当である。
 〔懲戒・懲戒解雇―懲戒事由―二重就職・競業避止〕
 規則一〇条が「職員は、上司の許可を得ないで、次の行為をしてはならない。」と定め、同条一号が「事業を営みまたは他の業務に携わること。」を許可事項と規定している。
 (中 略)
 労働者は、労働契約の締結によって、使用者に対し、労働を提供すべき義務(労働義務)を負担する。ところが、労働者が「事業を営みまたは他の業務に携わる」と、使用者に対する労働を提供すべき義務の履行が不能ないし不完全になり、ひいては職場秩序を乱すおそれがある。また、労働者は、労働契約の締結によって、信義則上、使用者の利益を不当に侵害しないように行為すべき義務を負担すると解されるところ、労働者の営む事業又は携わる業務の内容ないし性格いかんによっては(労働義務の履行が不能になるおそれがない場合にも)、使用者の社会的評価を低下毀損する等使用者の利益を侵害するおそれがある。
 したがって、使用者は、右のような不利益を避けるため、労働者が事業を営み又は他の業務に携わることを一般的に禁止し、使用者の許可にかからしめることができると解される。規則一〇条一号も、右のような趣旨で、職員が事業を営み又は他の業務に携わることをNHKの許可にかからしめているものと解せられる。
 とすれば、規則一〇条一号の許可・不許可を判断するについては、労働を提供すべき義務が履行不能ないし不完全になるおそれの有無やその程度、企業秩序を乱すおそれの有無やその程度、事業又は業務の内容や性格、とくにNHKの社会的評価に与える影響等の諸般の事情を総合して判断すべきである(ただし、労働を提供すべき義務が履行不能になる場合には、労働者が事業を営み又は他の業務に携わることを許可するか否かの判断について、使用者は広汎な裁量を有すると解される。けだし、使用者は、労働契約に基づき、労働提供を求める権利を有しているのであって、法令等に特段の規定のない限り、労働を提供すべき義務を免除する法律上の義務を負わないからである。他方、労働を提供すべき義務が履行不能になるおそれのない場合においては、使用者は、使用者の利益を侵害する特段の事情のない限り、労働時間外の労働者の私生活上の行動について支配や拘束を及ぼし得ないのであるから、原則として、労働者が事業を営み又は他の業務に携わることを許可するよう覊束されると解すべきである。)。
 そして、規則一〇条一号の前記趣旨に照せば、同号所定の「業務」とは、広く継続して行われる事務を含むのであって、第三者の支配下で反覆・継続するか、自らの意思と責任で行うか、あるいは、NHKの業務と関係するか否かを問わない、と解するのが相当である。
 〔懲戒・懲戒解雇―懲戒事由―職務懈怠・欠勤〕
 規程一七条二号が「無断欠勤」を懲戒事由としたのは、職員が正当な理由もなく恣意的に欠勤できるとすれば、勤務計画がたてられず、他の職員に過重又は不時の負担をかけるのみならず、勤労意欲を減退させ、ひいては職場秩序を乱し、事業の運営に支障を生じることになるおそれがあるので、かかる恣意的欠勤を防止するためであると解される。そして、《証拠略》によると、NHKは、無断欠勤とは、欠勤願いによらず欠勤した場合と、欠勤の願い出に対して許可を与えられていないにもかかわらず欠勤した場合とを含むと取り扱っている、と認められる。
 してみると、欠勤願いを提出したが承認を得られず欠勤した場合も、恣意的な欠勤であることは変わりなく、その評価において無届欠勤と選ぶところがないと解されるから、規程一七条二号所定の「無断欠勤」に該当すると解される。