全 情 報

ID番号 01500
事件名 賃金請求控訴事件
いわゆる事件名 日本貨物検数協会事件
争点
事案概要  欠勤、遅刻、早退を理由として賃金を減額する旨の就業規則の新規定に基づいて、賃金を減額された従業員らが、その相当額の支払を請求した事例。(一審 請求一部認容、一部棄却、当審 控訴棄却)
参照法条 労働基準法89条,93条
体系項目 就業規則(民事) / 就業規則の一方的不利益変更 / 賃金・賞与
裁判年月日 1975年10月28日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和46年 (ネ) 2402 
昭和46年 (ネ) 2503 
裁判結果 棄却(上告)
出典 高裁民集28巻4号320頁/時報794号50頁/東高民時報26巻10号208頁/タイムズ342号193頁
審級関係 一審/01488/東京地/昭46. 9.13/昭和43年(ワ)1277号
評釈論文 慶谷淑夫・判例評論209号41頁
判決理由  就業規則は、使用者が一方的に変更し得るものである。しかし、それがその使用者の経営する事業場に使用される労働者の労働契約上の既得権を奪う内容のものである場合には、その内容である労働条件の変更にその労働者の所属する労働組合が同意すると否とを問わず、その労働者が同意しないときには、右就業規則の変更が行われてもその労働者の既得権は奪われない。これに反し、就業規則が、事業場に使用される労働者の労働条件を労働者の不利益に変更する内容のものである場合にはその不利益変更にその労働者が同意しなくてもその所属する労働組合が労働協約を締結して同意するときには右労働者は就業規則に効力の優先する協約が締結されたことにより新しい不利益な労働条件を甘受しなければならないと解する余地はあろう。
 労働者またはその所属する、労働組合の同意がないのに使用者が就業規則の一方的変更によって労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として許されないと解すべきである。もっとも、労働条件の統一的かつ画一的な処理のため、たとえば、賃金締切期日が一か月二回であったのを一回とするような賃金計算方法の変更などはそれが労使関係においては合理的なものであるかぎり許される余地もあろう。しかし、賃金計算方法の変更であっても、継続的契約関係としての労働契約関係上、通常の労働者にとって免かれ難い欠勤の場合に本給の減少を伴い、同じく遅刻の場合に原則として月極め手当の減少を伴い、同じく早退の場合に本給の減少を伴い、長期的に実質賃金の低下を生ずる本件のような賃金計算方法の変更は、労働条件のうちでも労使の利害が真向から対立する賃金額を左右するものであるから、たとえそれが使用者にとって合理的にみえても、原則に立ちかえって考え、許されないと解すべきである。