全 情 報

ID番号 01573
事件名 地位保全等仮処分申請事件
いわゆる事件名 日本通信機事件
争点
事案概要  満五五歳の停年退職制を定めた就業規則に従って退職扱いとされた従業員が、右就業規則中停年年令に関する部分は、協約によりその実施が一時停止されており、右退職扱いは無効であるとして地位保全等求めた仮処分申請事件。(申請却下)
参照法条 労働組合法15条1項,2項
労働基準法89条
体系項目 就業規則(民事) / 就業規則と協約
裁判年月日 1968年4月6日
裁判所名 横浜地
裁判形式 判決
事件番号 昭和41年 (ヨ) 951 
裁判結果
出典 労経速報640号12頁
審級関係
評釈論文 川口実・法学研究〔慶応大学〕41巻8号88頁
判決理由  (イ)申請の理由一、二項の事実、(ロ)申請人が昭和三八年六月二〇日満五五歳に達したこと、(ハ)被申請会社の昭和三八年四月一日づけ就業規則に満五五歳停年退職制度が盛りこまれたこと、(ニ)右就業規則中、停年制の年令に関する部分が申請の理由三項のとおり昭和三八年七月八日労使間に成立した協定により実施(効力)が一時停止されたことは、いずれも当事者間に争いがない。
 (中 略)
 さて、一般に労働協約の有効期間は三年と定められ、三年をこえる定をした場合は三年に短縮されること、労組法一五条一、二項に明文のあるところであり、この規定はいわゆる強行法規であることは異論のないところである。一方、本件協定は、停年制度における年令という、労働者の待遇に関する一条件即ち労働条件に関する一種の基準を内容としておりその意味において労働協約に属するものと解される。このように、本件協定が労働協約たる性質を有する以上、そして、また、本件協定が前記(ニ)のとおり、不確定期間ではあるが、とにかく有効期間の定のあるものである以上、やはり前記法条項により規律され、その有効期間は三年をこえることができないと解するのを相当とする。換言すれば、本件協定はそれが成立した昭和三八年七月八日から三年間有効であって、昭和四一年七月八日の経過により失効したと認めるのが相当である。
 (中 略)
 以上の認定によって明らかになったように、昭和三八年七月八日の本件協定は昭和四一年七月八日限り失効した。このことは同年四月一日づけ就業規則中の満五五歳停年退職制度の実施停止が解けたことを意味する。したがって、申請人は昭和三八年六月二〇日限り会社の従業員たる資格を失うこととなった。