全 情 報

ID番号 01582
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 服部時計店事件
争点
事案概要  技能習得者(養成工)として採用された従業員が、就業規則と会社養成所規定との適用を受け、同規定中に就業規則等に違反するときは養成契約を解除する旨の定があり、かつ、就業規則中制裁解雇のほか予告手当の提供による解雇を定めた条項の解雇事由に、「怠惰にして職場の迷惑になる者」「その他これに準ずる程度の事由」等を列挙してある場合において、右の事由は、解雇権の制限事由であって、養成工の責に帰すべき事由により養成契約の目的達成を著しく困難ならしめた場合を指称すると解釈した事例。
参照法条 労働基準法93条
民法627条
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の限界
裁判年月日 1957年2月7日
裁判所名 東京地
裁判形式 決定
事件番号 昭和29年 (ヨ) 4057 
裁判結果
出典 労働民例集8巻1号57頁/労経速報236号2頁/労働法令通信10巻8号13頁
審級関係
評釈論文 労働時報10巻10号22頁/労働判例百選〔ジュリスト252号の2〕44頁
判決理由  従業員の責に帰すべき事由により解雇する場合については就業規則第七十八条第三号には怠惰にして職場の迷惑になるもの、同条第四号にはその他前各号に準ずる程度の事由と規定されおり、また右養成所規定第二十八条には、養成工が規程(昭二二、一〇、三一、労働省令第六号技能者養成規程)第九条(同条第二号法、この命令、規則又は養成契約の定にしばしば違反した場合、同条第三号素質順応又は能力が不充分で成業の見込がない場合)に該当する場合には、養成契約を解除し退所させる旨の規定のあることが認められる。
 ところで右就業規則第七十八条の規定が基準法第二十条第一項本文の解雇権を制限したものであるかどうかについては右規定の文言とその他の規定の趣旨とを参酌して決すべきであるが、右規則が第十章に第三十九条から第六十二条まで制裁として労働者の非難すべき行動を列挙し、譴責から制裁解雇までの四段階に分け情状により不利益処分に差等を設けている趣旨が明瞭に看取されるので、このことと解雇が労働者にとって最も重い不利益処分であることを考え合すときは、就業規則第七十八条が制裁解雇の章の外に規定されていてもその解雇事由が労働者の責に帰すべき事由によるものである限り制裁解雇に外ならないわけであるから、その事由は軽微又は情状軽いものを含まない場合に限定したものと解するのが相当である。