全 情 報

ID番号 01667
事件名 退職金請求事件
いわゆる事件名 九州運送事件
争点
事案概要  停年で退職した元従業員が、退職後五年を経過してから、合併前に所属していた旧会社の退職手当支給規則により算定した退職金額(被告会社退職金規定附則により認められる)と実際に支給された退職金との差額の支払を請求した事例。(請求認容)
参照法条 労働基準法11条,115条
体系項目 賃金(民事) / 賃金の支払い原則 / 賃金請求権と時効
雑則(民事) / 時効
裁判年月日 1973年3月7日
裁判所名 大分地
裁判形式 判決
事件番号 昭和47年 (ワ) 182 
裁判結果 認容(控訴)
出典 時報709号106頁
審級関係
評釈論文 藤田若雄・ジュリスト575号130頁
判決理由  前記事実によれば、本件退職金は不確定期限付後払賃金の性質を有するものと認められるので、同法一一条の賃金にあたると解される。しかしながら、本件の如き退職金は、日常頻繁に生ずるものではなく、かつ、多額になるのが常であり、しかもそれに関する証拠の保全も十分に行われるのが通例であるから、これを短期に時効で消滅させなければならない実質的な理由はないというべく、これを二年の短期で時効消滅させるときは退職したとはいえ経済的弱者であることにかわりはない債権者の保護にもとり、つまりは使用者が労働者より優位にあるため債権を訴訟によって実行することが困難であることを考慮して民法一七四条の特則として規定されたといわれる労基法一一五条の立法趣旨をも没却することになりかねないのであって、さなきだに批判の多い短期消滅時劾制度の不当さを拡大するばかりであると考えられる。加えて、同条に「この法律の規定による賃金」とは右の立法趣旨からみて同法二四条二項本文の毎月一回以上支払われる賃金をいうものと解する余地がある。
 こうして、本件のような退職金については、同法一一五条の適用はないと解するのを相当とするから、被告の右主張は採用できない筋合いである。