全 情 報

ID番号 01687
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 国際興業事件
争点
事案概要  就業規則上の「会社業務の円滑なる遂行に非協力と認められたとき」とする条項にもとづく懲戒解雇につき、その意味を解釈し、効力停止の仮処分申請を認容した事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 風紀紊乱
裁判年月日 1956年8月22日
裁判所名 東京地
裁判形式 決定
事件番号 昭和29年 (ヨ) 4061 
裁判結果
出典 労働民例集7巻4号660頁/タイムズ61号110頁
審級関係
評釈論文
判決理由  ところで就業規則第九十二条第六号に掲げる会社業務の円滑なる遂行に非協力とは、職務遂行が著しく不熱心であるとか、又は故意に他の従業員の作業その他会社の施設秩序を妨害して、会社の作業能率を低下させる場合等をいう趣旨と解すべきであって、これが職務遂行と直接関係のない道義的非行又は会社の作業能率を低下させる程の秩序紊乱とならない行為をも律する趣旨でないことは、その文言上明らかである。ところで、前認定の行為は、道義的には非難に価する行為であるが、職場外の行為であって、行為の性質上職務の遂行とは直接の関連を有しないものというの外はない。もっとも被申請人会社のように多数の男女従業員を擁する場合には、業務の円滑な遂行上、風紀の維持は会社の関心事たるを失わないであろうけれども、特殊の例外を除き一従業員の操行によって会社業務が妨害される程の風紀の紊乱を来すことは通常考えられないところであり、本件において偶々その相手方が被申請人会社の女子車掌であっても、その結果会社業務が妨害される程の風紀紊乱とは見られないし、又右所為により同申請人又は同車掌の職務遂行に支障を及ぼした旨の疎明もないのであるから、右解雇規定に該当しない。
 次に同条第九号に引用する第百二十二条第十五号は、業務外における会社の信用を害し、又は体面を汚す行為を解雇事由としているが、前認定の行為が一般に知悉されたとしても行為当事者自身の被る不名誉はとも角として、社会通念上当然には、被申請人会社の信用を害し、又は体面を汚すものと解することはできないのであるから、右規定にも該当しない。従って、本件解雇の意思表示は就業規則の適用を誤ったもので、無効である。