全 情 報

ID番号 01692
事件名 仮処分控訴事件
いわゆる事件名 神戸製鋼所事件
争点
事案概要  最終学歴の詐称が、就業規則所定の懲戒事由たる「重要な前歴を偽った」場合に当るとして懲戒解雇した事例につき、仮処分一審を取り消し、権利濫用に当らないとして申請を却下した例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 経歴詐称
裁判年月日 1957年8月29日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 昭和30年 (ネ) 486 
裁判結果
出典 労働民例集8巻4号413頁
審級関係
評釈論文 日労研資料418号10頁
判決理由  叙上の事実関係に基いて考察するときは控訴会社が被控訴人に対し前示しやく量軽減規定を適用して懲戒の種類を変更する措置を採量することなく、敢えて八年間平工員で勤続した被控訴人を解雇の懲戒処分に付したことが必ずしも一般社会観念に照らし著しく妥当を欠くものとして就業規則により使用者に委ねられた制裁権の適正な行使の範囲を超越する違法あるものと解することができない。尤も前示疏乙第六号証及び当審証人Aの証言によれば控訴会社において昭和二十一年より昭和三十年に至る間前歴詐称により解雇又は勧告による退職となった者は総数九十一名であるが、その殆んどが入社一年以内に処分を受けており、被控訴人の如く八年前の事由に基き処断解雇された事例は全く稀有であることが疏明されるけれども先きに疏明せられた各事情の下においては控訴人が被控訴人を解雇処分に付したことを目して、正義公正の観念に悖る解雇権の濫用と即断することはできない。