全 情 報

ID番号 01709
事件名 仮処分控訴事件
いわゆる事件名 岩田屋事件
争点
事案概要  顧客に対するピケッティング等を理由とする闘争委員に対する懲戒解雇につき、仮処分申請がなされた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 違法争議行為・組合活動
裁判年月日 1964年9月29日
裁判所名 福岡高
裁判形式 判決
事件番号 昭和36年 (ネ) 450 
裁判結果
出典 労働民例集15巻5号1036頁
審級関係
評釈論文 吾妻光俊・労働経済判例速報529号23頁/後藤清・法律時報37巻7号81頁/沼田稲次郎・新版労働判例百選〔別冊ジュリスト13号〕176頁/正田彬・季刊労働法55号90頁/石川吉右衛門・ジュリスト370号151頁/中浜虎一・新版労働判例百選〔別冊ジュリスト13号〕224頁
判決理由  ピケツテイングはストライキと表裏一体をなし、ストライキを実効あらしめるためのものである以上、争議組合員及び支援労組が、たんに団結力を示威すること自体は、そのため顧客がこれによって心理的威圧を受け、入店購買することを諦めたとしても、なんら違法というべきではない。原判決説示のいわゆる平和的説得によって、顧客が入店しないことは、正当なピケツテイングのもたらす当然の結果である。争議行為の第三者たる顧客は、争議権の正当な行使としてのピケツテイングを尊重することを要請される。心ある良識人は、特段の事情のないかぎり、わざわざピケツトラインを通過してまで入店し購買することはない。この意味において、顧客は正当なピケツテイングの反射的結果として、多少とも不利益ないし不便を忍容することを余儀なくされる。この不便不利益のために、顧客がその忿懣をピケツトラインを守る労組員らに投げかけ、ために労組員との間に紛議混雑を生じたとしても、争議行為を違法と評価すべきではない、このことは一審申請人らの責任を判断するについて顧慮する必要のあるところである。
 (中 略)
 一審申請人X1の前示(一)の(1)ないし(3)の行為、X2の前示(三)の(1)及び(2)の行為、X4の前示(二)の(1)の行為は、就業規則(成立に争いのない疎乙第一〇号証参照なお疎乙第一〇号証は一審申請人X3、X5、X6、X7、X8についても疎明となる。)第八二条九号、第八一条六号、一二号に各該当するところ、前認定説示の諸般の情状を考慮すると、懲戒解雇する程の責任があるとは認められないのに、一審被申請人が刑罰でいえば死刑にも等しい、最も重い懲戒たる懲戒解雇に処したのは、結局就業規則の適用を誤った違法があるので、同解雇は無効といわなければならない。そして右三名については、原判決第七の二に記載の者ら同様に仮処分の必要性があることは、原判決が右の者らについて説示するのと同様であるから、この点につき原判決の記載を引用する。