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ID番号 01729
事件名 労働事件仮処分控訴事件
いわゆる事件名 日本通運事件
争点
事案概要  控訴会社指定の経路とは異なる経路を私用のために運行していたことを理由に休職を命ぜられ、その後解雇された被控訴人が、賃金支払等の仮処分を求めた事例。(控訴認容申請却下)
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務上の不正行為
裁判年月日 1967年7月18日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 昭和39年 (ネ) 607 
裁判結果 取消 却下
出典 労働民例集18巻4号794頁/時報507号68頁/タイムズ213号186頁
審級関係 一審/05383/大阪地/昭39. 5. 8/昭和37年(ヨ)1162号
評釈論文
判決理由  五、被控訴人は、労働協約第四七条柱書の但書を適用しなかったのは違法であると主張する。成立に争いのない甲第二号証により明らかなように、労働協約第四七条によると、「会社は、組合員が懲戒委員会の審査に付されたときは、休職を命ずる。ただし、情状により休職を命じないことがある。」となっているが、第五〇条第一項には、「会社は、休職期間中の賃金を支払わない。ただし、第四七条第六号および第七号の規定によって休職を命ぜられた組合員に対しては、基準内賃金相当額の全部または一部を補償することがある。」と規定され、同第四九条第一項には、「休職期間は、勤続期間に算入しない。ただし、中略、第四七条第七号による事件が懲戒の必要なしと決定されたときの休職期間は、勤続期間に算入する。」と規定されている。したがって、休職処分は、従業員にとって著しい不利益処分であるから、労働協約第四七条柱書の但書を適用するか否かは、従業員を懲戒委員会の審査に付した事由、情状等諸般の事情を慎重に考慮して決定すべきであり、休職を命じないのが客観的にみて相当であると認められるのに、但書を適用しない場合には、違法であると解すべきである。しかしながら、本件につきこれをみるに、前示認定のように、被控訴人は、控訴人所有のトラックを使用し、控訴人の指示命令に違反し、一年間にわたり私用のため指定経路外の運行を継続し、しかも右事件が問題化し、A労働組合大阪地区梅田分会のB執行委員から右経路外運行が問題になっていることをきかされてから後も、本件休職処分になるまで右経路外運行をやめず継続していたのであり、助手にも迷惑をかけるものであるから、その行為は、重大な就業規則違反であり、その情状も重いものと認めるのを相当とする。しかも、控訴人のように、全国的にその営業所を有し多数の従業員を雇傭し多数の貨物自動車等を使用して運送業を営んでいる会社(この点は、顕著な事実である。)にあっては、その運営する貨物自動車の運行の安全および効率的運行を計るため、合理的でしかも安全、経済的な運行路線を定め、特段の事情のない限り従業員をしてこれを遵守せしめることは、当然であって、それが会社にとっても、従業員にとっても利益となることは、いうまでもない。もし、従業員が、会社がその経験と道路や交通事情を勘案して定めこれを指示した運行経路や路線を正当な事由なく運行せず、私用のために長期間にわたり継続的に右指示に違背し、しかも右違背の事実発覚後も依然として右行為を敢行している場合に、会社がその従業員に対し、懲戒委員会の審査に付するとともに、休職を命じ、その職場から一時排除することは、客観的にみて相当であり、また職場規律を維持するためにも必要かつ、やむを得ないものと解するのを相当とする。以上の次第で、控訴人が被控訴人に対し、労働協約第四七条柱書の但書を適用せずに休職を命じたことには、正当な事由があると認められるから、被控訴人の主張は、採用できない。