全 情 報

ID番号 01755
事件名 仮処分控訴事件
いわゆる事件名 小野田セメント事件
争点
事案概要  ピケッティングの方法による出荷阻止を指令した組合支部長の指令に従い、これを企画、指導した支部組合役員が、右出荷阻止が違法であるとして懲戒解雇されたのに対し、その無効を主張して地位保全等求めた仮処分申請事件の控訴審。(原判決変更、組合支部長のみ勝訴)
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 違法争議行為・組合活動
裁判年月日 1970年10月8日
裁判所名 福岡高
裁判形式 判決
事件番号 昭和43年 (ネ) 128 
昭和44年 (ネ) 905 
裁判結果
出典 労働民例集21巻5号1326頁
審級関係 一審/04282/大分地/昭43. 2.27/昭和40年(ヨ)189号
評釈論文 国武輝久・労働法の判例〔ジュリスト増刊〕166頁/菅野和夫・ジュリスト489号155頁
判決理由  ところで一般に労働組合がストライキを行なうに当り、これに対して使用者側が行なう出荷活動を阻止すべく組合の統制下にピケッテイングを実施することは、ストライキの効果を確保するために必要な手段であって、これが平和的説得を建前とする限り争議権の行使として法的にも保障されているものと解すべきところ、叙上事実に徴すれば、津久見工場でなさんとした管理職による出荷は労働協約に違反するものではなく、またこれに対して組合本部が各支部に指令したピケットの方法による出荷阻止も積極的妨害行為を実行することを内容とするものではないので何ら違法の点は存在しないけれども、被控訴人Y1、同Y2、同Y3、同Y4が支部において企画指導した行為は本部の指令の範囲を逸脱し、あくまでも管理職による出荷を阻止するとの前提のもとに多数の威力を背景にして管理職の自由意思を制圧し、もって当初の目的を貫徹したものであって、これら行為は平和的説得の範囲をこえた違法のものといわざるをえない。
 そうだとすると、右被控訴人四名のとった行為は就業規則第五八条第五号の勤務時間中にほかの社員に対して暴行を加えまたは脅迫してその業務を妨害したもの、第八号の犯罪行為があってその情状の重いものには該らないとしても、第九号の右各号に準ずるふつごうな行為があったものに該当するものというべきである。
 被控訴人Y5は本件争議期間中は拡大中央闘争委員会の委員として東京本部に駐在していたものであり、同委員会で決定した事項はこれを津久見支部に伝達しており、同支部の支部長たる立場において同支部に対してピケットによる出荷阻止を指令し、同支部との間にたえず電話連絡をとっていたことは前段認定のとおりであるけれども、組合本部が各支部に指令した出荷阻止行為の内容自体においては何ら違法の点が存しないものであることは右説示のとおりであり、また各支部のなす争議の具体的内容方法については各支部闘争委員に一任されていたのであって、被控訴人Y5がこれに関与したことについては疎明がない。また津久見工場側から支部に対し工場協議会の開催が申し入れられたことにつき、組合本部として、右申し入れが出荷をすることを前提とするものであればこれを拒否すべき旨決定し、右指令を支部に対し発したことにつき被控訴人Y5が関与していたとしても、そのこと自体から同被控訴人において違法な争議行為に加担していたものということはできない。
 そうだとすると、控訴人の被控訴人Y5に対する本件解雇については就業規則に所定の懲戒解雇事由に該当する事実は存在しないものというべきであるから、控訴人の本件雇傭関係終了の主張はいずれも理由がなく、従ってその余の点について判断するまでもなく被控訴人Y5は控訴会社の従業員たる地位を現在まで保持しているものといわなければならない。